9月FOMCのMinutes-Better alignment
リスクの評価
ほとんど全員(almost all)のメンバーは、インフレの上方リスクが減少し、雇用の下方リスクが上昇したと評価し、デュアルマンデートの達成に向けたリスクは概ねバランスしたとの見方を示した。 この間、2名(a couple of)のメンバーは労働市場の顕著な悪化のリスクはないとした一方、数名(several)のメンバーは個人消費の想定以上の減速の可能性を指摘した。その上で、FOMCメンバーは、インフレの上方リスクは最後の利上げ以降に顕著に低下したとし、大多数(a vast majority)のメンバーはインフレリスクが概ねバランスしたと評価した。
金融政策の運営
これらの議論を踏まえて、大多数(substantial majority)のメンバーが50bpの利下げを支持した。 これらのメンバーは、政策スタンスの再調整(recalibration)によって、インフレや労働市場の足元の動向によりよく適応する(better alignment)との考えを示した。加えて、利下げが経済と労働市場の力強さを支持し、リスクバランスをより反映するとした。 もっとも、数名(some)のメンバーは、前回(7月)会合で25bpの利下げの可能性があった点を指摘し、その後のデータはインフレ目標への収斂を示したと指摘した。一方、数名(some)のメンバーは、インフレ率がなお高く、経済成長が強く、失業が低位であるだけに、今回(9月)も25bpの利下げがありうると指摘し、他の数名(few others)もそうした提案を支持した可能性を指摘した。 さらに、数名(several)のメンバーは、25bpの利下げはFRBに金融引締めの度合いを評価する時間をもたらすとの考えを示したほか、数名(a few)のメンバーは、25bpの利上げの方が今後の予見可能性は高まるとした。これに対し、数名(a few)のメンバーは、毎回の利下げ幅でなく全体の利下げ経路の方が、金融引締めの度合いの評価には重要と指摘した。 今後についてFOMCメンバーは、時間をかけてより中立的なスタンスへ移行することが適当との考えを確認した。その上で、今回の利下げが、景気の悪化を反映したものと理解されたり、FOMCメンバーにとって適切なペースを超える利下げと理解されたりしないようにすることが重要と強調した。 また、利下げ後も金融は引締め的であるが、その程度に関する評価に幅があるとした上で、今後の政策決定は経済動向やその見通し、リスクバランスに依存することを説明する点の重要さを確認した。 最後にリスクマネジメントの観点では、数名(some)のメンバーが、金融引締めの解除が遅延したり過小であった場合は、経済と雇用を悪化させるリスクがあると指摘したほか、数名(a few)のメンバーはそうしたリスクが顕在化した場合の評価の困難さも指摘した。 これに対し、数名(several)のメンバーは、金融引締めの解除が早すぎたり過大であった場合は、インフレの減速を阻害したり、再燃させたりするリスクがあると指摘した。また、数名(some)のメンバーは中立金利の水準が不確実である点が金融引締めの評価を困難化しており、緩やかな利下げが適切と指摘した。 井上哲也(野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 チーフシニア研究員) --- この記事は、NRIウェブサイトの【井上哲也のReview on Central Banking】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
井上 哲也