民間から特別支援学校に転職して「最高」と感じてる
特別支援学校って最高じゃない?
こんにちは。平熱です。主に知的障害のある子どもたちの通う特別支援学校で10年くらい働く現役教員です。 特別支援教育に関する3冊の書籍を出版し、今でこそこうして教員採用試験を受験するみなさまにすっぺらこっぺらと与太話をさせていただいていますが、実は最初から教員を目指していたわけではありません。 教育大学でも教育学部でもない大学に通い、3年生の途中で卒業の見通しが立っていたため「4年生はやることないし、教員免許でも取っておくか」と「やることないしサウナでも行くか」くらいのテンションで教職の単位を取得した程度です。卒業時に教員免許は取得していたものの、結局教職とはまったく関係ないベンチャー企業に就職しました。 パーティーを開けばシャンパンで乾杯するようなイケイケの会社でした。さまざまな種類の仕事を任され、大きなお金を動かし、責任のあるポジションで業務を行いました。 ですが、辞めちゃいました。なんとなく。なんかちがうことしたくて。 そして、電話がかかってきたんです。講師登録をしていた教育委員会から、「特別支援学校で講師をしてもらえないか」って。 特別支援学校? 正直、詳しいことは全然わかっていませんでした。でも、介護等体験での印象もよかったし、なんかおもしろそうだし他にやることも決まってないしなぁって勤務予定の支援学校を見学させてもらうことにしたんです。 で、最高でした。 なんかもうファンキーすぎて笑けてきました。ちょうどホールであそんでいる時間だったこともあり、自由オブ自由。みんな好き勝手はしゃいでいました。 授業も見学しました。少人数で、先生方がつくったであろう教材や、独特の配置や環境で整えられた教室。 自分が通ってきた学校とはなにもかもがちがいました。なにより、自分が学生のころには掃いて捨てるほどいた「恐怖でコントロールする先生」が見当たりません。 子どもひとりひとりと向き合い、やさしく指導支援するその姿に「この一員となって、自分も特別支援学校で働いてみたい」と感じ、そのままチャレンジしてみることにしました。 講師として働きながら通信制の大学で特別支援学校教諭の教員免許を取得し、教員採用試験に合格して、今も支援学校に勤務しています。 ざっと説明すると、わたしの教員生活はこんな感じです。どうです? エリートとはほど遠いでしょ。 完全な漂流教員。野良です。野良。 ですが、働きはじめてもっと思いましたよ。「特別支援学校って最高じゃない?」って。 正直に言うとね、わたしだって知的障害のある子どもや大人とほとんど関わったことのない人生でした。 だから、ぶっちゃけ働くまで自閉症の子どもたちにどういった特性があるのかさえ全然知らなかったです。あたりまえのように使われるADHD、 ASD、ABA……よく似た専門用語の多さに腹も立ちました。Aからはじまりすぎやろ。 ですが、現場で先輩方にいろんなことを教えてもらい、見て学び、研修を受け、なにより自分自身で「こういうことか?」を試して失敗してやり直して、たくさんの知識や経験を血肉にしてきました。その中で 「特別支援学校って最先端じゃない?」 「障害があるかないかの線引きなんて、あってないようなもんでしょうよ」 「障害のある子へのアプローチは、障害のない子にも有効だよな」 そんなことを考えるようになったんです。 以前いた企業とは全然ちがいます。オフィスに飾られていた現代アートは、廊下に飾られる子どもたちのファンキーな作品になり、シャンパンで乾杯してたパーティーは、牛乳で乾杯する給食になりました。 ですが「子どもや保護者(お客さん)が求めてることはなんだろう、困りごとを解決するために必要なことってなんだろう?」そう考えることに大差はありません。 野良の教員をここまで夢中にさせる特別支援学校って最高じゃない? 次回は、実際に特別支援学校ではどんな学校生活を送っているか紹介していきまーす。絶対読んでくれよな!! 平熱(へいねつ) 主に知的障害をもつ子どもたちが通う特別支援学校で10年くらい働く現役の先生。やさしくてちょっと笑える特別支援教育のつぶやきが人気を集め、 Xフォロワー数は9.2万人(2024年7月現在)。 小学部、中学部、高等部のすべての学部を担任し、幅広い年齢やニーズの子どもたち、保護者と関わる。「視覚支援」「課題の分解」「スモールステップ」「見えないところを考える」など、発達障害やグレーゾーンの子どもたちだけではなく、全人類に有効な特別支援教育にぞっこん。障害の種類や程度にとらわれず「この子はどんな子?」を大切にし、子どもを恐怖でコントロールする「こわい指導」はしない。「先生も子どももしんどくならない環境」で子ども、関わる大人たちのニーズを満たす働き方を模索中。 著書に『特別支援教育が教えてくれた発達が気になる子の育て方』(かんき出版)、『「ここ塗ってね」と画用紙を指差したわたしの指を丁寧に塗りたくってくれる特別支援学校って最高じゃない?』(飛鳥新社)、『むずかしい毎日に、むつかしい話をしよう。』(東洋館出版社)。 特別支援学校の先生として唯一の目標は、ねほりんぱほりんに出演すること。 *『月刊教員養成セミナー2024年10月号』 「平熱先生の特別支援教育 こんなこと大事にしてます」より 小中学校の通常学級の通う子どものうち、発達障害の可能性のある子どもが8.8%(=35人学級なら3人)いるという昨今。どの校種の先生になっても、特別支援教育は決して他人事ではありません。でも特別支援教育って具体的にどういう支援をするの? 何に気をつければいい? 特別支援学校ではたらく平熱先生に、特別支援教育のあれこれを毎月おはなしいただきます。