英国の10代少年、一夏の恋で禁錮1年に直面した理由 ドバイ
「あなたを壊すこともある」
UAEは外国人受刑者の割合が世界でも特に高い国の一つだが、人口の約90%が外国人であることを考えると驚くことではない。スターリング氏によると、UAEで拘束された人のほとんどは刑務所には収監されない。 ドバイを拠点とする法律事務所の幹部アザーン・サラディン氏は、これらの法律の厳格な適用は公共の安全と治安を維持するために必要だと語る。「法律は国民、または国外から来た人々を保護することを意図している」。 サラディン氏はこの国の犯罪率の低さに言及。警察の公式統計によると、ドバイの23年の犯罪件数は10万人当たりわずか24.6件だった。まったく異なる比率で測定されてはいるものの英国の1000人当たり84件という割合よりも大幅に低い。 サラディン氏は「私が訪れた国はすべて法律を施行している」とし、無知は言い訳にはならず、法律を把握するのは各旅行者の責任だと述べた。ファカナさんのケースでは「少女が性的同意年齢を下回っており、両親が告訴したことは明らかだ」と断じた。 一方、スターマー英首相の報道官は、ファカナさん一家にとって非常に苦痛な状況であることを認識しているとし、ファカナさんの家族や法律顧問のチームと定期的に連絡を取っていると述べた。 UAEの法制度に困惑している外国人は他にもいる。 ドバイを拠点とするエミレーツ航空の客室乗務員でアイルランド人のトリ・トウェイさん(28)は今年7月、自殺未遂と飲酒の罪で禁錮6カ月の判決に直面した。 ドバイに1年間住んでいたトウェイさんは、同棲を始めてからパートナーが暴力を振るうようになったと語る。家庭内暴力を警察に通報したところ、パートナーは報復としてトウェイさんを提訴。その結果、トウェイさんは働くことも出国することもできない渡航禁止処分を受けた。 トウェイさんはCNNの電話取材に対し、「警察は、私が申し立てを取り下げれば渡航禁止は解除されると言っていた」ものの、実現しなかったと語った。行き場を失い、パートナーのもとに戻るほかなかったという。 今年5月に自殺を図った後、トウェイさんは警察署で自殺未遂の罪に問われた。UAEでは2020年に自殺を非犯罪化するとの発表が行われたにもかかわらず、自殺は違法とされている。 トウェイさんは起訴内容を知らされていなかったため、自分で調べなければならなかったうえ、法的代理人を見つけるのにも苦労した。弁護士は前払いで2万ディルハム(約86万円)を払わなければ、相談に乗ることすらしないという。 トウェイさんは最終的にディテインド・イン・ドバイから法的助言を受けた。また、アイルランド政府からの圧力が強まり、メディアからの注目も高まったことで、2カ月の渡航禁止が解除。起訴も取り下げられ、帰国がかなった。 この出来事の前、トウェイさんはドバイで幸せだったと言い、後にした街と文化を今でもとても愛している。「これはただの制度であり、それが引き起こすストレスだ。すべてを失う可能性があるので、あなたを壊すこともある」