「ふかふかで、近未来感」24年ぶりリニューアル!近鉄の"新型車両"誕生の裏側 目玉は緑の座席『やさしば』気兼ねなくベビーカーを置ける
老朽化を理由に、24年ぶりのリニューアルとなった近鉄の一般車両。開発を担ったのは、車両設計一筋の36歳の社員です。デザインを一新し、車内には新たなこだわりも盛り込まれましたが…そのねらいとは?新型車両誕生の裏側に密着しました。 【写真を見る】近鉄の新型車両「8A系」製造の様子 パーツ作り~組み立て完了まで約3か月
「お客さまにとって思い出に残る電車に」
9月29日。近鉄の大阪上本町駅のホームには、カメラを手にした多くの人が詰めかけていました。目的は、近鉄の新型一般車両「8A系」。一般車両の全面リニューアルは実に24年ぶりです。 (鉄道ファン) 「新しい近鉄の車両に乗りにきた」 「きのうから楽しみで仕方ないね」 「見られるし乗れるから、めっちゃうれしい」 「近鉄らしい、濃い赤色だなと」 「全面リニューアルされていて、めっちゃかっこよかった」 通勤などで使う一般車両の一新。いわば近鉄の“新たな顔”を託されたのは、車両設計一筋の喜多陽平さん(36)です。 (近鉄 技術管理部 喜多陽平さん)「長くお客さまにとって思い出に残る電車になればいいなと」
ベビーカーが置ける「緑の座席」子ども連れに優しい車両を
今年1月。喜多さんがやってきたのは、東大阪市にある工場。新型車両の製造が着々と進んでいました。 (近鉄 喜多陽平さん)「紙の図面から始まって、台枠ができて、これから六面体(車体)になると思うと、いよいよですね」 この日は、電車の印象を大きく左右する“先頭車両”の作業に立ち合います。大部分は人の手で行われ、パーツを作るところから組み立て完了まで約3か月を要します。投資額は89億円以上。第1弾で48両を製造する、まさに一大プロジェクトです。ここまで力を入れるのには、ワケがありました。 (近鉄 喜多陽平さん)「沿線人口の減少という課題もあり、我々もお客さまに喜ばれるサービスを提供していかないといけないですし、お客さまも満足していただけないので」 人口減少やテレワークの普及などで、今後減っていくと見られている通学・通勤客。車両を一新することで利便性を高め、様々な客を取り込みたいという近鉄の思惑があります。 そのカギを握るのが、一風変わった“緑の座席”です。背もたれが2面あり、足もとには広めのスペースを確保。大きな荷物やベビーカーを持っていても快適に利用できます。また、スーツケースなどが動かないようにストッパーもつけました。通勤客だけでなく、子ども連れや旅行客など誰でも利用しやすい車両を目指します。 (近鉄 喜多陽平さん)「大きい荷物を持っている人は、どこに座ったらいいのかわからないとか、荷物を通路に置いて座ると、行き来の邪魔になったりしますし、『自分が邪魔をしているな』と気兼ねしてしまうので、そういった点を解消するためにこのエリアを作りました」 ほかの部署の社員にも協力してもらい、開発中の座席について感想を聞き取ります。 (他部署の社員)「こう座るかな」 (喜多陽平さん)「(座りながら)荷物はずっと持っていますか?」 (他部署の社員)「普通のキャリーケースって、手で持っていないと、コマが坂道とかで転がっていくから、必ず手は添えておきたい」 (喜多陽平さんさん)「(ストッパーが)床にあるんですよね…」 (他部署の社員)「あ!L字のものがあるじゃないですか」 (喜多陽平さん)「(ストッパーを使用して)いかがでしょう?」 (他部署の社員)「がっちり止まってますね」 (子育て中の社員)「ベビーカーや大きな荷物を置けるスペースがあるのは、お出かけの際に電車を利用する障壁を取り除くのにも新しい試みとしていいのかなと思いました」 スペースの評価は上々。さらに、新たな気づきもありました。 (喜多陽平さん)「なにも説明せずに使ってもらったんですけど、レクチャーがなくてもこのスペースは使えそうですか?」 (子育て中の社員)「いや、それが…わかるかな?と」 足もとに設けた、荷物を置けるスペース。認識してもらうには、もうひと工夫いりそうです。