F1界の闇 なぜ可夢偉の無給問題が起きたのか?
それが2007年以降はタバコ広告が厳しく規制されたため、チームに入るスポンサー料が年々減少。 フェラーリやメルセデスAMGのように自動車メーカーのサポートを受けているチームや、レッドブルのようにモータースポーツに理解のある世界的な企業のバックアップがあるチーム以外は、厳しい台所事情となってしまった。 昨年は優勝を経験しているロータスですら、所属するライコネンへ給料の未払いが発覚。可夢偉も表彰台に上がった2012年に、ザウバーからギャラが未払いだったことが判明したほどだった。 フェラーリ、メルセデスAMG、レッドブル以外のチームは、ドライバーがチームからギャラをもらうどころか、持参金を持ってシートを得るという状況に発展。2012年には可夢偉がシートを得るために募金活動を展開したのは記憶に新しい。 しかし、その額は年々高騰し、最近では20~30億円が相場となっていたため、可夢偉が2012年の年末に集めた約8億円ではどうすることもできず、1年浪人。 そして、2014年に向けて可夢偉の前に現れたのが、ケータハムで当時オーナーを務めていたトニー・フェルナンデスだった。エア・アジアなどで実業家として成功を収めていたフェルナンデスにとって欲しかったのは、持参金を持ってくるドライバーではなく、ポイントを取れるドライバーだった。 しかも、ケータハムとの交渉で可夢偉が「無給でもいいから乗せてほしい」と言ったこともフェルナンデスの胸を打った。こうして、可夢偉は14年移動費だけをもらい、事実上無給でチームの再建を目指したのである。つまり、今年可夢偉が無給なのは、可夢偉にプロとしてお金を受け取れるだけの腕がないわけでもなく、チームにお金がないことが本当の理由でもなかった。 ところが、期待していたにもかかわらず、チームが序盤戦から大きくつまずいたのを見て、フェルナンデスは「もうこのチームに資金を投入する価値がない」と判断し、シーズン半ばにチームを売却。 すると、新しい経営陣たちのケータハムは台所事情が一気に苦しくなり、10月に事実上の破綻を来す。