一般公開を一時休止 川口の国指定重要文化財「旧田中家住宅」 耐震改修工事のため27日で 天井や建具の一部に「屋久杉」使用 大正時代に建設の歴史的建造物
埼玉県川口市末広の国指定重要文化財「旧田中家住宅」は耐震改修工事のため、今月27日をもって一般公開を一時中止し、当面の間、休館する。市担当者は「この機会に川口にこれだけ素晴らしい建造物があることを知ってほしい」と来館を呼びかけている。 眺望を重視して最上階に設けられ、迎賓のために使われた洋館3階の大広間【写真2枚】
旧田中家住宅は、みそ醸造や木材商などとして財を成した四代目田中徳兵衛が大正時代に建設した歴史的建造物。れんが造り3階建てで、2005年に川口市の所有となり、翌06年に国の登録有形文化財に指定。18年には洋館、和館、文庫蔵、れんが塀が川口市で初めて、国の重要文化財に指定されている。 洋館は1923(大正12)年に完成。和館は川口市が市制施行した翌年の34(昭和9)年に増築され、完成した。 資産家だった4代目田中徳兵衛は職業柄、建築資材にはこだわりがあり、当時、入手できる最高級の木材が用いられたという。洋館2階の座敷には1万本に1本とされる希少な「黒柿」が使われているほか、1階東側の座敷では天井や建具の一部に「屋久杉」を使用。外装のれんがは建築現場近くで専門の職人が焼いたものを使い、調度品は欧州から取り寄せたり、国内企業に特注するなど、美しさ、品質ともに、ぜいの限りを尽くした建造物となっている。
06年から一般公開され、建物の見学や季節ごとの催しで市民らに親しまれてきたが、耐震診断を行ったところ、改修が必要と判明。休館後の来年1月から本格的な調査と工事が始まり、初めての大規模改修が行われる。 市教委文化財課学芸員の出野雄也さんは「川口にこれだけ素晴らしい建造物があることを知っていただきたい。この機会に建物内の素晴らしさもぜひご覧いただきたい」と呼びかけている。 開館時間は午前9時半から午後4時半(最終入館は午後4時)、月曜休館。入館料一般210円、小中学生50円。問い合わせは、同館(電話048・202・6179)へ。