介護とは「親の”死に方”を選ぶ」こと…「後悔のない選択」は不可能だが、「意味のある選択」をするために必要なこととは
親から与えられる最後の贈り物
何を選択しても、「本当にこれでよかったのだろうか」とあとあとまで悩むことになるかもしれません。中には、親が亡くなった後も面影を偲ぶたびに、「口からでよかったのか」「鼻腔にしてよかったのか」「胃瘻にしてよかったのか」と問い続ける人もいるでしょう。 とはいえ、少し大雑把な言い方になりますが、親にとっては何を選ぼうと大して違いはないのかもしれません。大事なことは、子どもが考え抜いた末に決めたかどうかなのだと思います。 親の体にチューブを入れるか、入れないか。それを判断するとき、子どもは考えます。 「生きるって何だろう」「年をとるって、死ぬって、どういうことだろう」と。 このとき、親の死に方を選ぶという現実から逃げずに、自分自身と向き合って考えたことが、後にこれから生きていく子ども本人の生き方を支える礎となっていきます。その礎をつくるきっかけは、親から与えられる最後の贈り物と言えるでしょう。 また、この判断が重すぎる課題としてのしかかってきたときに、真剣に悩み考えた気持ちを分かち合ってくれた家族や周囲の人たちの存在、そのとき交わした言葉や共有した体験は、今後の人生の大切な財産となっていくはずです。 『「すぐに救急車を呼んで!」「決して呼ばないで」…背反する家族の意向。倒れる前に決めておきたい「最期の対応」』へ続く
髙口 光子(理学療法士・介護支援専門員・介護福祉士・現:介護アドバイザー/「元気がでる介護研究所」代表)