サブカル文脈から読み解く2010年代以降のアイドルシーン、BiSとBiSHの快進撃
6者6様、見事に全員バラバラな個性を持っていた
NON TiE-UP / BiSH 田家:2018年6月に発売になりました、BiSHのシングルで「NON TiE-UP」。ノンタイアップというタイトルのシングル。 西澤:この頃には、オリコンチャートの上位に入るようになったり、いろいろなタイアップ曲もつくようになっていて。ちょうど同じ日に「Life is beautiful」と「HiDE the BLUE」という両方ともタイアップがついているシングルの発売日だったんです。そこで、告知なしにゲリラ・リリースで、「NON TiE-UP」という曲が発売された形になりますね。 田家:両A面シングルがタイアップで出て、同じ日にタイアップのない「NON TiE-UP」という曲をぶつけるんだ。 西澤:はい、ゲリラで。 田家:メジャーにいながら、ゲリラ的なおもしろさを必ずつけるみたいなものがずっとある。 西澤:そうですね。『THE GUERRiLA BiSH』というアルバムもあるんですけど、そのアルバムも発売日の前に、突然タワーレコードにブックレットがないCDを300円で販売するみたいなこともやったりしていました。思いついてもやらないようなプロモーションを思い切ってやってきたというところもBiSHのおもしろいところかなと思います。 田家:それはショップもちゃんとおもしろがってやりましょうと、歩調が合わないとなかなかできないですもんね。 西澤:本当にお店の方もすごい好きで、一緒に盛り上げてやってくれいたんだと思いますね。 田家:例えばレコード店がすごい力を入れていたみたいなものはあるんですか? 西澤:やっぱりタワーレコードさんは全店舗協力的で。ゲリラ・リリースとかも情報とか漏れちゃったら元も子もないんですけど、一切そういうのはなく、突然パッと並びましたからね。 田家:なるほどね。西澤さんはBiSHに関するも作られているとか。 西澤:僕は「BiSHぴあ」という本のインタビューをしたり、ZINEを作ったりと、少し外側から記事を書いたりしてご一緒させていただくことが多かったですね。 田家:近くでご覧になっていたライター・編集者の方だった。 西澤:そのうち一人という感じだと思いますね。 LETTERS / BiSH 田家:2020年7月に発売になりましたBiSHのアルバム『LETTERS』のタイトル曲「LETTERS」。これはアルバムチャート1位になって、前の週にやはりBiSHの『FOR LiVE -BiSH BEST-』というアルバムが1位で、2週間続けて彼らのアルバムが1位だった。 西澤:コロナ禍の中で出た作品なんです。コロナ禍のときって、外出もできなければ人とも会えなくなって。特にライブハウスがすごく危険な場所みたいな感じでニュースで報道されたり、悪者にされていた時期だったんですね。その中で、当初リリースする予定だったものを前倒しにして、3.5枚目のアルバムという形で『LETTERS』というアルバムを作って発信したんです。それまでお客さんと会っていたライブの機会がなくなって、お客さん側もつらいというところに、作品でつながりを持ちたいということで、『LETTERS』という作品を出した。もう1枚のベスト・アルバムも急遽作って、売上を全部、それまでBiSHが出たライブハウスに寄付した。今はみんなしんどいけど、なんとか乗り越えようということで、ベスト・アルバムを急遽作ることになったという経緯があるんです。 田家:それはメインカルチャーの集団的アイドルの人たちとは全然違う生き方ですね。 西澤:そうですね。最初路上とかっていう話も出ましたけど、現場主義というところがあるグループだったのかなと思いますね。 田家:さっきアイナ・ジ・エンドの曲をお聴きいただいたのですが、メンバーがそれぞれキャラクターがあったでしょう。 西澤:やっぱり6人6様でした。セントチヒロ・チッチさんはフロントマンとしてMCと歌でお客さんの気持ちを掴んでいたし、アイナ・ジ・エンドさんは歌とダンスの部分でグループを引っ張っていました。モモコグミカンパニーさんは作詞が得意で、グループにいながら本を書いたり、今も作家として活躍していますし、ハシヤスメ・アツコさんは今バラエティ番組に出たり活躍していて、ちょっとおもしろキャラクター。リンリンさんはパンキッシュかつ芸術家として今独自の活動をしていたり、アユニ・DさんはBiSHに新しい風を吹き込み、いまはPEDROというバンドで活躍している。6者6様、見事に全員バラバラな個性を持っていたのが、すごくおもしろかったのかなと思いますね。 田家:そういうメンバーが2023年6月に東京ドームで解散するわけですが、解散コンサートのタイトルが「Bye-Bye Show for Never」。今日最後の曲をお聴きいただきます。