実用性にはほど遠いけどロマンの塊! バケモノみたいな「16気筒エンジン」を積んだクルマはやっぱり見た目も強烈だった
昭和世代の16気筒は迷わずチゼタ!
16気筒と聞くと、脊髄反射的に「チゼタ!」と喜色を浮かべるのは昭和40年代生まれのデフォ(笑)。それだけ1991年のチゼタV16Tのデビューは印象深いものだったのです。 クラウディオ・ザンポッリというイタリア人オーナーと、イタロ・ディスコでお馴染みのジョルジオ・モロダーの出資によって生まれたプロジェクトなので、チゼタ・モロダーV16Tというのが正式名。最後のTは横置きされたエンジンと、垂直に搭載されたクラッチ/ミッション/デフがT字となることから付けられたもの。 90度のV16エンジンは6リッター、DOHC 64バルブで最高出力は550馬力、最大トルクは55.0Nmであり、最高速は328km/h、0-100km/h加速:4.2秒とスーパーカーらしいパフォーマンスを発揮してくれます。このエンジン、当時は開発にランボルギーニのスタッフが多かったことからジャルパなどで使ったV8をつなげたのではないかと、まことしやかな噂が流れたものです。 また、スタイリングを担ったのがマルチェロ・ガンディーニで、当時のランボルギーニを所有していた「クライスラーからダメ出しされたディアブロ向けスケッチを元にした」とのコメントも。 つまり、ザンポッリはランボルギーニのスピンオフテクノロジーや、ガンディーニのボツデザインをちゃっかりいただいたというか、巧みに利用したと考えられるわけで、クライスラーがオーナーでなかったら、ランボルギーニから「V16横置きミッドシップのミウラEVO」なんてモデルとして登場していた可能性だってなきにしもあらず。というか、筆者がザンポッリなら「本当はミウラの名でランボから売られるはずだったんですけどね」みたいなセールストークかましますけどね。 その証拠になるかわかりませんが、当時のチゼタV16Tは20台そこそこ作って倒産しているものの(モロダーが抜けて資金難に)、ザンポッリはファミリービジネスとしていまもカリフォルニアでV16Tのオーダーを受付けているのです。そう聞いて、トゥールビヨンよりワクワクしてきた方は、筆者を含め昭和40年代生まれに違いないでしょう(笑)。
石橋 寛