「不妊治療中に仕事を休む難しさ感じて」苦悩した30代女性 キャリアを見つめ直した末の決断は『ウマ娘』がきっかけで
自分を大切にしたおかげか、妊活にも変化がありました。ちょうど大阪に引っ越したときに転職し、病院も転院したんです。人工授精ではうまくいかなかったため、体外受精に取り組むことになりました。さいわいなことに1回目の体外受精で妊娠し、長女を出産しました。
■子育て中心の生活「仕事も新たな気持ちで向き合える」 ── 妊娠・出産を経た現在は、どのような働き方をしていますか? 松元さん:妊活中と変わらず、フルリモートで働いています。もともと子どもができたら、すぐ保育園に預けるのではなく、できるだけ一緒にいたいと思っていました。いまはその希望がかなって、1歳になる娘を中心にして生活をしています。午前中は子育て支援センターなどに行って一緒に遊び、帰宅して娘がちょっとテレビを観ている間に家事、お昼寝中にできる仕事をする感じです。午後も子どもと遊んで夕食をとり、本格的に仕事に取り組むのは娘が就寝してからです。「子どもと一緒に過ごす時間を大事にする軸」があるので、自然と働き方もそれに合わせたものになりました。
育児中に仕事をすると、新鮮な気持ちで取り組むこともできます。子育てをしていると、大人と話をすることがほとんどありません。でも、仕事をすることで、世間とのつながりを感じられるし、社会に貢献できていると実感できます。一緒に働いている同僚はリモートワークで働いている人がほとんど。みんな住んでいる地域も異なり、実際に会ったことはありません。それでも、わからないことはすぐ聞けるし、困ったことがあったら手を貸し合えます。本当にいい環境です。
── 松元さんにとって、子育てと両立できるリモートワークはベストな働き方なのですね。 松元さん:そう思います。子どもや夫との時間を大切にしながら、キャリアも築けるのは本当にありがたいです。自分に合った働き方を見つけられたのは、妊活で大変な思いをしたおかげかもしれません。私にとって大切なものは何か、どんな働き方がベストなのかをじっくり考えられたからこそですね。 PROFILE 松元佳那子さん まつもと・かなこ。大学院修了後、大学院助手を経て大学博物館で学芸員として働く。退職後、大江運送株式会社のリモートワーカーとして働く。夫、1歳の娘の3人家族。
取材・文/齋田多恵 写真/松元佳那子、大江運送株式会社
齋田 多恵