存亡をかけた“小メーカー”の生き残り戦略 ボルボの新世代ディーゼル
フォード傘下離脱がエンジン開発の転換点に
言うまでもないがエンジンはクルマにとって重要なパーツだ。低価格で勝負するBセグメントならともかく、プレミアムブランドとして生き残るためには、どうしても独自性の高いエンジンが必要だ。しかもこれからの時代を考えればそれは低燃費で低排出ガスでなくてはならない。さらに、上はXC90から下はV40まで、サイズと重量、車格の違うラインナップをカバーするエンジン群を全て自力で用意するには莫大な資本を必要とする。 ボルボはかつて、直列4気筒、直列5気筒、直列6気筒、V型8気筒と多彩なエンジンを用意していた。前述の通り、エンジンの新設計は会社の屋台骨を揺るがすほどの大投資になる。ましてや年産たった50万台の規模だ。それだけのエンジンバリエーションを新規開発したら、回収にどれだけの期間がかかるのか想像を絶する。
しかし、ボルボにはツキがあった。時代の趨勢が味方したのだ。ダウンサイジングターボの時代がやってきた。ワイドレンジで展開する全ての車種を直列4気筒でまかなえる可能性が出てきたのだ。圧縮比面でもトレンドが変わりつつあった。ディーゼルエンジンは低圧縮化に、ガソリンエンジンは高圧縮化に歩み寄った結果、ディーゼルとガソリンでシリンダーブロックを共用できる可能性が出てきた。 ボルボは全ラインナップを4気筒に、さらにディーゼルとガソリンでもブロックを共用することを決めた。もちろんそれぞれの車両の性格もあるので、全く同じというわけには行かない。そこでモデルやグレードキャラクターの特徴をしっかり押し出して行くために、モジュラー設計によって25%の部品をバリエーションごとに別設計にし、25%を完全共通部品に、残る50%を類似部品にすることで、設計と生産のリソースをセーブしつつ商品の作り分けと両立できるように改めた。その結果一つのコアユニットから、4種のガソリンエンジンと4種のディーゼルエンジンが変奏曲の様に展開されることになった。 これは近年の欧州メーカーのトレンドに則った方法で、先鞭をつけたのはBMWだ。BMWは、同じ基本設計を使ってバリエーションを構築し、過給圧を変えて、グレードに応じた動力性能を提供するという手法を編み出した。 ボルボの新型モジュラー4気筒エンジンは、昨年末にすでにガソリンユニットのリリースが始まっており、今回はこれにディーゼルが加わった。「D4」と呼ばれるこの2.0リッターのユニットは、V40、V40クロスカントリー、S60、V60、XC60に搭載され、ボルボの販売台数ベースで90%の顧客がディーゼルユニットを選べる様になった。