[MOM4941]正智深谷DF佐藤飛友(3年)_小学生のころに両親と訪れた代表戦で誓った「約束の埼スタ」のピッチで全国出場を手繰り寄せる決勝点!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] [11.17 選手権埼玉県予選決勝 正智深谷高 1-0 浦和学院高 埼スタ] 【写真】ジダンとフィーゴに“削られる”日本人に再脚光「すげえ構図」「2人がかりで止めようとしてる」 蹴り込んだボールがゴールネットへ到達したのを見届けると、自然とその足は大応援団が声援を送り続けるスタンドへと向いていた。いつもは同じグラウンドで切磋琢磨しているチームメイトたちの笑顔と絶叫が、視界に入ってくる。 「メンバーに入った30人が頑張るのはもちろんですけど、やっぱり正智が掲げている『一致団結』ということができなければ、このチームは勝っていけないと思うので、今日も全校応援でしたし、スタンドのみんなも合わせて一致団結した結果が、今日のゴールや勝利に繋がったと思います」 2024年の正智深谷高を守備で支えてきたセンターバック。DF佐藤飛友(3年=FCコルージャ出身)がセットプレーから記録した貴重な1点が、チームを8年ぶりとなる冬の全国へと力強く導いた。 強豪対決となった今大会の3回戦・市立浦和高戦。佐藤はとにかく自分の思い描いていたようなプレーができなかったという。「前半はパスミスも多くて、イエローカードももらってしまいましたし、自分が後ろで支えられない分、攻撃もうまく行かなくて、悪い流れになった中で失点してしまって、このまま負けたら本当に悔いが残ると思っていました」。 試合は前半で1点のビハインドを負いながら、後半に入って2点を奪い返した正智深谷が逆転勝利。「その試合は(白岩)龍と鹿倉(颯太)が点を獲ってくれたので、もう次は絶対に自分がゴールでチームに貢献したいと思っていました」。準々決勝と準決勝は守備面できっちり貢献して、ともに1点差で勝ち上がったものの、ここまで大会無得点だった佐藤は明確な結果を求め続けていた。 迎えた浦和学院高と激突するファイナル。お互いに立ち上がりからチャンスを作り合う中で、前半18分に正智深谷はコーナーキックを獲得する。キッカーはレフティのDF鹿倉颯太(3年)。ニアで構えていた佐藤には明確なイメージがあった。 「自分はヘディングで逸らすのが得意なのでニアに入ったんですけど、浦和学院を分析した時に、こぼれ球の寄せが遅いのはわかっていたので、自分の頭を越えたらそこに回って、ボールを待とうかなと思っていました」。 鹿倉のキックが頭上を越えると、バックステップでポジションを取り直した佐藤の足元に、狙い通りのこぼれ球が現れる。右足一閃。強烈な弾道はDFに当たりながらも、ゴールネットを揺らす。「もう『入ってくれ!』と思っていたので、相手に当たって入ってくれて本当に良かったです」。 踵を返して走り出した先は、赤と緑に染まったスタンド。「メンバーに入りたくても入れない人たちもいるのに、そこで腐らないで自分たちの応援をしてくれたので、行こうかなと思っていました。もう嬉しい気持ちしかなかったです」(佐藤)。3年間の公式戦で2点目となるゴールをこの大一番に持ってくる勝負強さ。正智深谷が先制点を奪う。 ビハインドを負った浦和学院も丁寧なビルドアップをベースに、同点を狙って少しずつギアを上げてくる中で、佐藤とDF岸田永遠(3年)のセンターバックコンビを軸にした正智深谷のディフェンス陣は、プレスに行くところと構えるところを見極めながら、ゴール前に堅陣を敷き続ける。 佐藤の中にはこの大会を通じて培ってきた、確かな守備への自信があった。「準決勝をゼロで抑えた時に、『この大会は点を獲られる気がしないな』と思っていましたし、みんな気持ちも入っていたので、『1点入ったら守り切れる!』と思っていました」。際どいピンチではGK森穂貴(3年)もファインセーブを披露。時間を追うごとに集中力も研ぎ澄まされていく。 3分が掲示されたアディショナルタイムも経過し、タイムアップの瞬間がやってくる。ファイナルスコアは1-0。佐藤の目にもいろいろな感情の混じった涙がこみ上げてくる。「本当にメチャメチャ良い景色でした」。みんなでカップを掲げ、みんなで勝利の歌を歌い、みんなでダンスを踊る。ひそかにヒーローの座を狙っていたセンターバックの決勝点が、チームメイトに最高の笑顔と最高の歓喜をもたらした。 決勝のステージとなった埼玉スタジアム2002には、両親との忘れられない思い出があるという。「小学生の時に日本代表のワールドカップ予選の試合を見に来て、両親と『ここに立ちたいね』と話していたんですけど、今日も両親が試合を見に来ている中で、ここに立っているだけではなくて、勝っている姿を見せたかったので、それがさらに得点という形になって良かったです」。 あの日はただただ憧れの目で見つめていた、日本サッカーのさまざまな歴史の詰まったピッチを踏みしめるだけではなく、ゴールまで挙げてみせた佐藤の活躍が最高の親孝行となったことは、あえて言うまでもないだろう。 3年目でようやくたどり着いた選手権の全国大会。この赤と緑のユニフォームを纏って、行けるところまで駆け上がってやる。「自分は正智が全国ベスト8に行った代も生で会場で見ていたので、このユニフォームを着て、この大会に出たいなと思って正智に入りましたし、コルージャから正智に行った先輩の人たちが活躍しているのも見てきた中で、自分も試合に出ている以上は活躍したいなと思っていたので、結果を出せて良かったです」。 「全国では自分の持ち味のヘディングやロングフィードや球際で戦うところを見せたいですし、チームとしては、みんなで攻撃して、みんなで守るところを見せて、日本一になりたいです」。 伝統の『一致団結』を貫く正智深谷のディフェンスリーダー。佐藤飛友は全国の舞台で公式戦の“3点目”を叩き出し、再びヒーローの座をさらう準備を、着々と整えていくに違いない。 (取材・文 土屋雅史)
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