【朝日杯FS回顧】アドマイヤズームが示したセンスと可能性 1番人気5着アルテヴェローチェは見直し可能
スローの末脚比べ
2024年12月15日に京都競馬場で開催された朝日杯フューチュリティステークスは、川田将雅騎手騎乗のアドマイヤズームが優勝。2番手から上がり最速を記録と、センスが光る完璧な運びだった。 【朝日杯フューチュリティステークス2024 推奨馬】前走タイムは歴代王者を超える! 勝率60%&複勝率100%データに該当(SPAIA) オープン馬10頭、うち2勝馬は7頭。重賞2着か1勝止まりは9頭とホープフルSとの分散が顕著になった戦いは、前後半800m48.0-46.1と後半が1秒9も速いスローペースになった。 それもそのはずで、この世代の重賞は1200mの小倉2歳Sすら前後半600m34.5-34.5と速くなく、京王杯2歳Sもマイルのデイリー杯2歳Sもスロー。唯一速かったのがサウジアラビアRCの前後半800m45.7-47.3だが、それを演出した逃げ先行馬はここにはいない。 先手をとって引っ張る馬がいないマイル戦はたいてい前半が遅く、スピードよりも我慢比べの色が濃くなる。勝負所までひとかたまりで進み、激しいスペース争いと末脚勝負になった。 どの馬も手応え十分で迎える最後の直線は激しく競り合うものだが、結果はその逆。番手から外に出てきたアドマイヤズームが一気に勝負を決め、2着に2馬身半、その後ろも2馬身半、さらに2馬身とバラバラに入線した。
センスと可能性を感じるアドマイヤズーム
この結果がなにを意味するのか。まずひとつ、2番手で流れに乗り、上がり最速33.6を繰り出したアドマイヤズームのセンスが抜けていた。 番手から上がり最速ではどうしたって後ろは差せない。物理的な差が生じるだけの決め手はすなわち力の違いでもある。 友道康夫厩舎は朝日杯FSをアドマイヤマーズとドウデュースで2勝しているが、どちらも翌春にGⅠの勝ち星を上積みした。イメージとしてはアドマイヤマーズに近く、現状マイル路線なら春も負けない。 1986年以降、前走未勝利勝ち直後に朝日杯FSを制したのはアドマイヤズームで4頭目。過去の3頭は89年アイネスフウジン、00年メジロベイリー、20年グレナディアガーズ。5番人気、10番人気、7番人気と穴候補から飛躍した。 過去の例を見ると単勝はすべて4桁配当だが、今回のアドマイヤズームは5番人気ながら単勝は910円。馬券上手ともいえるが、未勝利直後でもある程度売れたのはメンバーレベルの裏返しでもある。 アドマイヤズームのセンスが光った反面、スローであってもバラバラに入線したゴール前はレースレベルを疑わざるを得ない。 連続開催11週目の荒れた芝も考慮しないといけないが、末脚を繰り出せる馬が少なかったのも事実。“後方で展開に恵まれず不発だった”。そんな短評で次走見直しとするのは早計な気がする。末脚を繰り出せる状況で、できなかったと考えた方がいいだろう。 なにせスローペース戦が多い世代であり、来年もトライアルまでは我慢比べ、位置取り勝負になる公算が高い。位置をとれない限り、不発が続くのではないか。 勝ち馬に話を戻すと、父モーリスに母ダイワズームは母の父ハーツクライだから、サンデーサイレンスの4×3をもつ。モーリス産駒でこのパターンはジェラルディーナと同じだ。 ほかのGⅠ馬ジャックドールやピクシーナイトと比べると、モーリス産駒特有の持続力のなかに末脚の鋭さがある。アドマイヤズームももう少し位置を下げても問題ないだろう。 GⅠ馬になった以上、次走以降は周囲からマークを受ける。相手なりに走っても鋭さが変わらないなら、そう負ける場面は想像できない。 ダイワズームの仔は先日大井で連勝したヴィアメント、今秋の東京ダ2100m戦でオープン入りを決めたダノンブレットなどダート色が強いが、どちらも父キングカメハメハであり、父の色を出す。 ならば、モーリス産駒のアドマイヤズームはまだまだ強くなるだろう。晩成血統ではあるが、モーリスの父の父グラスワンダーは朝日杯3歳S(当時)で4連勝を決めた後、早熟のレッテルを貼られながら翌年に有馬記念を勝ち、栗毛の怪物に進化した。 アドマイヤズームはモーリスというよりグラスワンダーと重なる。隔世遺伝なる言葉は人間界のものだが、その可能性に夢は広がる。