レアル・マドリードの宝はエドゥアルド・カマビンガ 万能フィジカルエリートが輝く新時代の戦術とは
【万能フィジカルエリートはレアル・マドリードの宝】 ただ、本当はレアル・マドリードこそ決闘×10の守備に向いているはずなのだ。カマビンガと同様にベリンガム、バルベルデも攻守に全く弱点がない。この3人がMFに揃った時のレアル・マドリードこそ、「1対1で勝てばいい戦術」の頂点に君臨する可能性がある。 しかし、カルバハルの欠場で3人をMFに起用できなかった。ヴィニシウスとロドリゴが戦列復帰すれば、ハイプレスで全部1対1にする戦術自体が無理になりそうでもある。エムバペとヴィニシウスをそこまで守らせることができるかどうか。 おそらく正解はうすうすわかっているのだと思う。だが、まだ決定版を作れていない。 何とかノックアウトステージに進み、強豪同士の激突となった段階でポテンシャル全開というのが例年のパターンだが、今季はそこへ到達できるかどうかも怪しくなってきた。 まずは負傷者の回復。とくにカマビンガの復帰は待たれる。 アンゴラの難民キャンプで生まれ、安全を求めてフランスへ移住。スタッド・レンヌの下部組織に入るが、そのタイミングで家が火事で全焼して身分証がなく、入団はかなり難航したという。その逆境はカマビンガのモチベーションになったそうだ。16歳でデビュー、17歳でフランス代表入り。1932年のレネ・ジェラールを抜く最年少記録だった。 パスを捌ける、ドリブルで抜ける、ボール奪取のデュエル王。万能フィジカルエリートのカマビンガは、パズルから決闘へ移行する時代にうってつけであり、同類のベリンガム、バルベルデと同じチームにいる。これを活かさぬ手はない。エムバペとヴィニシウスのどちらを尊重するかなんてどうでもいいくらい。宝はすでに目の前にあるのだ。 連載一覧>>
西部謙司●文 text by Nishibe Kenji