16万件のクリニック情報を集約。「ドクターズ・ファイル」で急成長
クリニック探しにマッチングサービスのノウハウを
「ドクターズ・ファイル」を運営するギミック(東京・渋谷区)を2003年に創業したのが、横嶋大輔社長だ。リクルートフロムエー(現・リクルート)入社後、商品企画部長、営業企画部長を経験し、同社から独立支援を受けて起業した。 「自分自身や家族が体調を崩したときに痛感したのが、最も身近な医療機関であるクリニックの情報があまりに少ないということです。医療は生きることの根幹に関わる、最も切実で、重要な情報です。身近な医療を少しでも良くしていくために、リクルート時代に培ったマッチングサービスのノウハウを活かしていきたい。そう思ったのが、サービスを開始したきっかけでした」(横嶋社長) 前述の通り、医療関係の情報は取り扱いが極めて難しい。「ドクターズ・ファイル」も試行錯誤を繰り返すなかで、現在のスタイルに落ち着いたという。編集部内には、医療広告ガイドラインを習熟した専門の校閲チームを擁している。 「法令遵守は企業として絶対に果たさなくてはならない義務ですが、人の生命に関わる医療の世界では、さらに高い倫理観が求められます。私たちは医師、そして患者の信頼を失わないため、一般の方々では気が付かない細かな表現にまで気を使っています」(横嶋社長) ■「感謝の声」がビッグデータに 「医師そのもの」に焦点を当てるという記事のスタイルは、読者にも他のメディアではなかなか見られない現象を生み出している。それが「感謝の声」の多さだ。 「感謝の声」とは、「ドクターズ・ファイル」に掲載されているクリニックの医師に対し、患者が「感謝の声」を届けることができる機能だ。投稿された「感謝の声」は医師が登録したメールアドレスに通知されるが、1年に約2000件も集まっているという。ちなみにECサイトの「レビュー」のように、感謝の書き込みがサイト内で公開されることはない。まさに「患者が面と向かって伝えにくい医師への感謝の気持ちを『純粋に』届けるための仕組み」なのだ。 興味深いのはその内容だ。昨年集まった「声」を詳細に分析すると、圧倒的に多かったのが「医師が優しく丁寧に対応してくれた」だった。意外にも、最新の医療施設やオンライン診療への対応など、設備に関するものは、多くはなかったらしい。 開業医は「一国一城の主」なので、クリニックの運営方針を相談できる相手もなかなか見当たらない。つまり、自分のクリニック以外の実情を知る機会が乏しい。こうしたビッグデータの分析は「地域で求められる開業医のあり方」を開業医自身が知るための大きな助けとなり、ひいては地域医療の質の向上につながるのではないか。