DeNA残留は「あまり悩まなかった」 佐野恵太の忘れられない8年前の恩義
■芽生えた反骨心
この反骨心は、プロを生き抜くうえで大事な礎になった。
1年目で開幕1軍入りを果たすと、4年目の20年はオフに大リーグへ移籍した筒香嘉智に代わり、4番打者を任されるとともに主将に就任。この年は首位打者にも輝き、22年には最多安打のタイトルも獲得した。立ち位置を確立した今も、試合後には「自分の中でしっかりリセットしたいので」とバットを振り込んでから帰路に着くのがルーティンになっている。
今季は歴史的な大混戦となったリーグ戦を3位で終え、クライマックスシリーズ(CS)突破、さらにはソフトバンクを破っての日本シリーズ優勝…。怒涛の日々を終え、7月に取得した国内フリーエージェント(FA)権と向き合った。
球界での自身の立ち位置を図る意味で権利を行使する選手も多い。「もっと悩むのかな」という自身の予想に反し、気持ちはすぐに固まった。「あまり悩むこともなく、行使するという選択はなかったです」と残留を決めた。
脳裏に浮かんだのはもちろん、8年前のあの日のこと。「あの時にベイスターズに獲得してもらった。それで僕のプロ野球人生が始まった。ベイスターズのユニホームを着て活躍することで、チームに恩返しをしたいなと」。忘れはしない、チームへの恩義が決断を後押しした。
■26年WBC出場にも意欲
来季から新たに総額6億円規模の3年契約を結んだ。一塁には首位打者のオースティン、外野は今季頭角を現した梶原昂希や度会隆輝、ベテランの桑原将志や筒香とライバルは多い。日本シリーズ第5、6戦で先発を外れた。27年ぶりのリーグ優勝を目指すチームにあって、まずは「レギュラーをつかまないと」と足元を見つめる。
もちろん見据える先は、もっともっと高いところにある。侍ジャパンでの経験も経て、「もっと、もっと自分もいい選手になりたいなという思いを掻き立てられた」。2026年にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)も控える。
「選出してもらえるのであれば、何度でもという思いはあるし、そういう成績をシーズンで残していきたい」。30代で迎える来シーズン。背番号7の物語にはまだまだ続きがある。(川峯千尋)