元寇の「敵も含めて慰霊」に感動した福岡モンゴル国名誉領事、友好深めようと奮闘…流鏑馬にモンゴル側招く
鎌倉時代に起きた最初の元寇・文永の役(1274年)から750年となる節目に、エンジニアで福岡モンゴル国名誉領事のシーテベ・アルタンイルデンさん(54)が、日本とモンゴル両国の友好を深めようと奮闘している。アルタンイルデンさんは「過去に戦った日本とモンゴルから、平和の大切さを世界に発信したい」と訴えている。(小川晶弘) 【写真】流鏑馬で矢を放つモンゴルの射手(4日午後、福岡市西区で)
合同慰霊祭にも尽力
4日、元寇の犠牲者をまつる塚がある飯盛山(福岡市西区)麓の飯盛神社で、流鏑馬が奉納された。同神社で例年実施する神事に、今年は、モンゴルの馬術協会が初めて参加。同協会の射手が馬にまたがり、勢いよく駆け抜けながら矢を的に命中させると、見物客から歓声が上がった。
文永の役があったとされる旧暦10月にちなみ、10月20日には福岡市早良区の紅葉八幡宮で、合同慰霊祭「平和への祈り」が営まれた。神職と両国の僧侶ら計約60人が祝詞奏上や読経で、元寇の犠牲者を追悼した。
モンゴル側が参加する流鏑馬や合同慰霊祭は、アルタンイルデンさんの呼びかけで初めて実現した。紅葉八幡宮の平山晶生宮司(67)は「両国の交流のために行動する姿に熱意を感じた。モンゴルに興味を持つきっかけになる」と歓迎した。
モンゴルの大学で、IT(情報技術)を専門とした助教だったアルタンイルデンさんは1999年に、大阪大大学院に留学。卒業後の2002年に大阪でエンジニアとして働き始め、06年に福岡市に転勤した。
アルタンイルデンさんは会社勤めの傍ら、九州で暮らすモンゴル人らが災害時などに連絡を取り合えるように任意団体を結成。16年の熊本地震では、現地の留学生ら約10人をマイクロバスで福岡に避難させた。19年5月に、本国から委嘱を受け、名誉領事に就任した。
日本企業への助言も
名誉領事は、パスポートの手続きや、婚姻、出生届といった文書の受け付けなど行政サービスを無償で担う。アルタンイルデンさんはほかに、日本企業がモンゴルに進出する際の助言や民間企業間の人材交流などにも携わっている。