能登半島地震で被災 輪島塗作家・小西紋野「一回しかない人生。蒔絵にかけたい」避難生活で復興に取り組む今を追う
若宮さんは独自の世界観で、新しい価値を生み出すようなアート作品を作っていらして、それを目にして私も「自分の作品を作っていくことも大事だな」と思うようになりました。 ── 小西さんはご自身のホームページでも、「蒔絵師」ではなく「蒔絵アーティスト」とされていますね。 小西さん:注文された器だけではなく、自分の「作品」を生み出しているので、職人というよりアーティストだと思っています。自分の作りたいと思うもの、あるいはお客様といっしょに考えて、自分だからこそできるものを作っていきたいと思っています。
■2児出産も「ここでキャリアを中断するよりは」 ── 小西さんが作品づくりで大切にされていることは何ですか? 小西さん:蒔絵は材料の種類や技術が豊富なので、それぞれの材料をしっかりした技術で使いこなすことが大事だと思っています。 例えば漆にはさまざまな性質のものがあり、粘りの強さ、乾きの早さ、透明感などそれぞれ違います。それらを自分の作品を描くのに使いやすい状態に整えなければなりません。 また、筆づかいも少しブランクがあると手が動かなくなるので、ひたすら練習が必要です。材料や技法を最大限に活かしながら、豊かな表現ができればと思っています。
── 作品には、鮮やかな蝶やかわいい草花など、自然のモチーフが多いですね。 小西さん:漆の透明感や材料のきらめきが、自然界にあるものと近いように感じられるんです。生命力とか、そういうものを感じられるものが作れたらと思っていて。 自分がプラスの感じがするものというか、力が湧いたり「いいな」と感じるもの、温かみとか力強さとか、自分の作品はそういうものを感じ取れる存在であってほしいな、と思っています。そういう願いが作品から伝わり、誰かの心に必要とされるような、ずっと見つめてもらえるような存在になってくれたら、と思っています。
── 小さいお子さんがふたりいらっしゃいますが、子育てされながらお仕事はいかがですか? 小西さん:ひとり目が生まれた時は実家に半年ほどいたので、蒔絵の道具を送って子どもが生まれるその日まで仕事をしていました。材料や道具を出しっぱなしのまま病院に行ったので、母が写真を撮って「これどうすればいいの」と聞いてきたり(笑)。産後も2か月目くらいから、母に子守を頼みながら途中の仕事をしあげたりしました。 ふたり目の時は、上の子がいるので集中して蒔絵の作業をするのは難しかったですが、図案を考えたり、夫も自営業でやっているので、夫に時間を融通してもらい子どもを見てもらいながら、夜作業をしたりしました。