長崎県内の養殖カキに「異変」…安定収量見込めず追われる対応 業者「赤字を覚悟」
冬の味覚、養殖カキの成育に異変が起きている。温暖化による海水温上昇が原因で、例年に比べカキの斃死(へいし)が増加。長崎県内有数の産地、長崎市戸石地区では8~9割のカキが死滅、成育にも遅れが出ている。安定収量が見込めず、県内の「カキ小屋」は営業開始を遅らせるなど対応に追われている。養殖業者からは「異例の事態。今季は赤字を覚悟している」などの声が上がる。 県水産加工流通課によると、今夏は県内全域で例年より海水温が1~2度ほど高かったという。同課は事態を把握しており「情報を集め、対策を検討する」としている。 「10月に入っても海水温が下がらなかった。全然だめ」。27日午前、戸石地区でカキ生産を15年間続ける福島政茂さん(53)は肩を落とす。例年12月ごろから種苗を入れ始め、約10カ月間かけて成育する。今年は6~7月の赤潮の影響のほか、9月に海面温度が30度を超える日が続いたことも響いた。 同地区では毎年11月、戸石フレッシュ朝市(同市戸石町)でカキ小屋を開いているが、今年は開催を1カ月ほどずらした。当面はスーパーや市場に出荷せず、カキ小屋での販売量を確保する。 ブランドカキ「小長井牡蠣(かき)」の産地、諫早市小長井地区。諫早湾漁協の野田清一組合長(75)は海水温が高かったことに加え「とにかく付着物が多かった」と話す。同地区では大量発生したホヤの一種「シロボヤ」がカキを覆い、水揚げ作業を阻害。高水温での死滅も含め、生産量は昨年と比べ3~4割減少の見通し。同漁協のカキ小屋の営業開始も1カ月ほど延期するという。 「九十九島カキ」で知られる佐世保市。マルモ水産の末竹邦彦社長(59)は高水温に強い広島県産、成長が早い宮城県産カキの種苗を使い分けし、リスクを分散してきた。 しかし「台風で海水温が変動を繰り返した」ため、収量は例年より5割ほど減る見込み。同社は養殖時期をずらすなどの取り組みを検討している。末竹社長は「養殖は環境に左右される。天候に合わせ、根本から養殖法を変えていくしかない」と語った。