【毎日書評】その悲しい気持ちはどこからくるの?本質を知り抜け出す術を持とう
週明けの月曜日は、とかく気持ちが沈みがち。そこでご紹介したいのは、臨床心理学者である著者による『悲しみ・無気力・失望を乗り越えるセラピー ブルーな気持ちの処方箋』(グウェンドリン・スミス 著、廣瀬久益 監修、小谷七生 訳、CCCメディアハウス)です。 まず本書で着目するのは、次のような点です。あなたは「ブルーな気持ち」になっているのでしょうか。それとも、うつ病を患っているのでしょうか。それを見分けるポイントを説明します。 そして、それぞれの状態に対し、どのようなサポートがあるのかも紹介します。さらに、さまざまな治療法の長所と、陥りやすい誤りについてもお教えします。 後半の付録では、社会状況や年代別のさまざまなうつ病について考え、また、うつ病に対して存在する多くの対処法や患者への寄り添い方について説明します。(「はじめに」より) つまり著者はここで専門的な立場から、かなり深いところまで突き詰めているわけです。とはいえ決して難しい内容ではなく、漠然とした不安を抱えている方にもわかりやすいアプローチを試みているところがポイントでもあります。 本書でお伝えする精神的な健康状態についての知識からは、多くのメリットが得られるでしょう。本書は単に、情報の提供だけに終わりません。うつ病だけでなく、あらゆる心の病に対する偏見を取り除き、そのような状態は恥ずかしいものではないということを証明できると信じています。(「はじめに」より) これは、とても心強いことばではないでしょうか? こうした考え方に基づく本書のなかから、きょうはCHAPTER1「ブルーな気持ち」に焦点を当ててみたいと思います。
悲しいという気持ち
いうまでもなく悲しみは、私たち誰もが持っている感情。誰かが亡くなったとか、人間関係が壊れたとか、あるいは友人や仕事などに関するチャンスを失ったりしたときなど、さまざまな場面で悲しさを感じるわけです。 感情は、生まれながらにして備わっているものです。負の感情はある問題や機会に直面したときに起こる、生物学的な反応だともいえます。 人間は、生き残るために「戦う/逃げる/固まる」という反応を進化させてきましたが、感情もそれに伴って生じました。 そして、恥や罪悪感などといった感情は、私たちが育つ社会的・文化的環境によって形づくられ、また学習されるものです。(12~13ページより) 著者はここ20年あまり、臨床の現場に身を置くなかで気づいたことがあるそうです。それは、なにか好ましくない感情を抱いたとき、人はその感情をなくそうとするということ。 たとえば人間関係が壊れて悲しい思いをしているときには、周囲から「きっと乗り越えられるよ」「前向きに考えよう」というようなことばをかけられるかもしれません。当然のことながら、そうやって声をかけてくれる人たちは、役に立とうとしているわけです。 ところが、こういった「悲しまないで/ブルーな気持ちにならないで」というプレッシャーはあまり助けにならないというのです。 それに、このような言葉は、人間が持つ感情の一部を抑制するように求めているのと同じです。詩人たちは、痛みと喜びを、同じコインの表裏だとよく表しますが、どちらも人生をまっとうするために必要なものなのです。(13~14ページより) なるほどそう考えれば、ブルーな気持ちも“必然的なもの”として受け入れやすくなるかもしれません。(12ページより)