【毎日書評】メンタル不調を言い訳にしない。大谷翔平から学ぶ「逆境を乗り越える力」
『限界を打ち破る 大谷翔平の名言』(桑原晃弥 著、ぱる出版)の冒頭で、著者は大谷翔平について次のように述べています。 驚くのは大谷の「逆境を乗り越える力」の凄さです。2024年の大谷は肘の手術により投げることができません。シーズン中はリハビリを続けながら打者としての成績が求められるわけですから、それだけでも大変なプレッシャーなのに、長年のパートナーだった水原一平の裏切りにより大谷自身あらぬ疑いをかけられるという経験もしています。 体調を崩し、ストレスから調子を落としても仕方のないところですが、大谷は「それも技術」と言い切ることで不安やストレスも一切言い訳にすることなく活躍を続けています。(「はじめに」より) ちなみに大谷は、過去にも幾度となく怪我や故障を経験しています。しかしそんな時期も打者としての練習を積み、実践を経験することで大きな成長を果たしているわけです。つまりトラブルに見舞われたとしても、トレーニングや経験によってそれらを乗り越えてきたということです。 いずれにしても、そんな大谷の姿を見ていると、自分が心の底から好きだと思えることのために自分の持てる力、持てる時間のすべてを注ぎ込む強さを感じずにはいられないと著者は述べています。 今の時代、目標に向かってがむしゃらに努力することは格好いいこととは思わない人が増えていますが、本当に好きなこと、やりたいことが見つかったなら、そこに向かってひたむきに努力してこそ人は成長できるし、成功に近づくことができるのも確かです。(「はじめに」より) またそれは、仕事をするならでさまざまな壁に直面するビジネスパーソンにも応用できるものでもあるでしょう。そこできょうは本書のなかから、第4章「挫折の乗り越え方」に注目してみたいと思います。
メンタルを言い訳にしたくないし、それも含めて技術
仕事で成果が上がらないときなどには、「最近、疲れ気味で」「いまいち気分が乗らなくて」「最近、心配ごとが多くて」など、体調の悪さや精神的な問題のせいにしたくなったりもするものです。たしかに不調だったり悩みを抱えていたりすれば、思うようなパフォーマンスは発揮できないでしょう。ただし、それはあくまで「普通の考え」だと著者は指摘しています。 大谷は2024年4月21日に、ドジャーススタジアムの対メッツ戦で日本人選手のトップに立つ176号を打ちました。しかし4月12日にホームランを打って松井秀喜の記録に並んでから1週間以上あとのことだったため、「不調なのかなあ」と心配されるのも無理のないところではありました。 しかも、韓国での開幕2戦目の前に大きなトラブルが勃発。通訳の水原一平が違法賭博に手を出したとして球団を解雇され、さらに大谷のお金を横領したり、金融機関を騙したこと、脱税などの罪で逮捕されるというショッキングな事件があったわけです。 そのため開幕から40打席もホームランが出ない大谷に対し、ある記者が「ホームランに時間を要したのはメンタルと技術、どちらが大きかったか」と質問したところ、大谷は「メンタルを言い訳にしたくないので、それも含めて技術だと思っています」と答え、周囲を驚かせています。(136ページより) あれだけの事件に巻き込まれれば、精神的に参り、不調に陥ったとしてもまったく不思議ではありません。しかし大谷は「メンタル」に逃げることなく、「技術の問題」だといい切ったわけです。 スポーツジャーナリストの二宮清純によると、調子が悪いと「メンタル」を理由にする選手は少なくないといいますが、本当のプロは「精神面よりも、技術が下手だから不調」と考えるといいます。大切なのはしっかりとした技術を確立することです。(136ページより) いいかえれば、「メンタルも含めて技術」と認められることこそが、大谷がつねに成果を出し続けられる理由であるわけです。そして上述のように、それは仕事にもそのままあてはまることでもあります。(134ページより)