「対話」と「レッドライン」 習氏がバイデン氏との首脳会談でトランプ氏にメッセージ発信
16日にペルーの首都リマでバイデン米大統領と会談した中国の習近平国家主席は、米側に対話や協力の継続を呼び掛ける一方で、「核心的利益」と位置付ける台湾問題などでは譲歩を拒む姿勢を鮮明にした。トランプ米次期大統領の就任後に対立激化が見込まれる中、習氏は対話を通じて決定的な衝突を回避しつつも自国の立場は曲げないとの方針とみられる。 【写真】APEC首脳会議の記念写真に納まる各国首脳ら。石破首相は撮影に参加していない 習氏にとっては、任期終了が迫るバイデン氏との会談を通じてトランプ氏にメッセージを発信するという意味合いが強かったとみられる。 第一のメッセージは「対話」だ。習氏は会談で「米政府と引き続き対話を保ち、協力を広げ、相違点をコントロールすることを望む」と呼び掛けた。 中国外交学院の高飛副院長は中国メディアに、会談で習氏が「相互尊重、平和共存、協力・ウィンウィン(相互利益)を推進するという原則や方向は変わらないという信号を次期米政権に伝達した」と解説した。トランプ氏の再登板で米中対立がさらに激化することも見込まれるが、中国側としては対話を通じて決定的な対立を避けたいものとみられる。 次が「レッドライン(越えてはならない一線)」だ。習氏は、台湾問題や民主・人権、政治体制、発展の権利を「レッドライン」として「挑戦は許さない」と強調。トランプ氏がこだわる貿易問題では交渉可能だが、台湾問題などでは一切の干渉を許さないという姿勢を示した形だ。 習氏は16日、リマで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で演説し、「アジア太平洋の協力が「単独主義や保護主義の台頭といった困難に直面している」と懸念を表明。各国・地域に対し「団結」を呼び掛けている。 中国は、米国との対立長期化は不可避との認識を持つ。トランプ次期政権下で同盟国などとの関係が緊張することも見込み、米国が主導してきた国際秩序の修正に力を入れるとみられる。(中国総局 三塚聖平)