「検証・安倍政権」<アベノミクス編>GDPや雇用はアップ、実質賃金が下がった背景
●賃金
言葉にすると「アベノミクスの恩恵を受けたのは富裕層ばかり。一般や貧困層は賃金そのものはアップしたが、消費税増税や円安によって賃金の上昇以上に物価が上がり、生活が苦しくなってしまった」という意見です。 毎月勤労統計調査(平成26年10月分結果速報)によると、一人あたりの「所定内給与は、前年同月比0.4%増の24万2340円」とあります。一方、消費者物価指数の全国(平成26年10月分)の前年同月比では、生鮮食品を除く総合(コアCPI)で2.9%の上昇、食料及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)で2.2%の上昇。前年同月比で賃金と物価を比べると物価の上昇率のほうが高くなっているという結果でした。 物価の上昇に賃金の上昇がついてこれなければ、実際に買える金額は少なくなるのも道理です。これが実質賃金の低下として問題視されているものです。
●雇用
一方で雇用はどうでしょうか。前段の毎月勤労統計調査(平成26年10月分結果速報)によると「常用雇用は、前年同月比1.6%増となった。このうち、一般労働者は1.5%増となり、パートタイム労働者は1.7%増となった」とあります。また完全失業率は「労働力調査(基本集計) 平成26年10月分」によると3.5%で0.5%減となり、完全失業者数は233万人で「前年同月に比べ30万人の減少。53か月連続の減少」という結果となりました。 また、「正規」「非正規」の従業員数の変化として正規の職員・従業員は3298万人で前年比7万人(0.2%)増、非正規の職員・従業員が1980万人で前年比16万人(0.8%)増となりました。ともに雇用は伸びていますが、非正規の数・伸び率のほうが高いという結果です。 年齢別でみると、もっとも増えたのは65歳以上の就業者数で、前年同月比で36万人増でした(年齢階級別就業者数)。さらに65歳以上の就業者では非正規の職員・従業員が31万人増加し、年齢階級別に見るとトップとなります。つまり、定年退職した世代が、非正規として再雇用されている数が非正規従業員増に大きな影響を与えていると読み取れます。 ここで賃金の話題に戻すと、2014年10月の一般労働者の所定内給与は一般労働者が30万6082円で、パートタイム労働者が9万677円です。正規と比べ非正規の給与は3分の1以下です。言い換えれば、非正規の増加によって、全体の賃金が押し下げられているということになるわけです。