吉田監督就任のS広島Rが新シーズンへ始動…復帰のMF瀧澤千聖が新10番「自分らしくブレずに」
サンフレッチェ広島レジーナが16日、新シーズンに向けて始動した。昨季はWEリーグカップを制して初のタイトルを獲得したが、リーグ戦では2年連続の5位で終わり、チーム立ち上げから指揮してきた中村伸監督が退任。この夏から吉田恵氏を新監督に迎え、新たなスタートを切った。 曇り空の下、見学に来たファンにまず挨拶をして練習が始まった。初日のトレーニングは約2時間。雨が降り出した中、走り込みやボールを使った練習で汗を流した。オフ明けでも選手たちの調子は良好なようで、指揮官は「(始動前の)自主練の間、チーム練習が始まるまでに段階的にコンディションを上げていってもらったのでスムーズにトレーニングできた」と充実の様子だった。 吉田監督にとって女子チームでの指揮は初めて。「自分で実際にやってみないとわからないことが多いと思うので、それに対応していくしかないと思っています」とチームと一緒に成長していく構えだ。DF近賀ゆかりは、「シンさん(中村前監督)もそうだったけど、まだ様子を見ている感じ。難しさはあると思うし、気を使ってくれている感じも伝わります」と明かした。 吉田新体制では過去3年間の積み重ねをベースとしつつ、「プラスアルファで自分の色を出していく」。まずは守備の改善を掲げ、結果にこだわる。「守備の強化をしながら、得点が奪える選手をもっと増やせるように、開幕に向けて準備していきたい」とチーム作りのポイントを口にした。 この夏の新加入選手はいないものの、退団したのはAC長野パルセイロ・レディースに移籍したFW大内梨央のみで、選手の入れ替わりはほぼない。だが、「メンバーは全然決めていない。当然、今から競争は始まっているし、いい競争ができる状況にしたい」という新指揮官のもとでゼロからのポジション争いが始まった。 新たなスタートを切ったチームの中で、MF瀧澤千聖が生き生きとした姿を見せた。昨季は2度のケガにより公式戦10試合の出場のみ。3月には左ひざのじん帯損傷で離脱し、オフシーズンをはさんで、この始動日に全体練習合流を果たした。「やっとみんなと同じ練習に復帰できてうれしかった」と満面の笑顔だ。 瀧澤は今季から新たに10番を背負って戦う。「チームから話があったときは迷ったけど、ケガをしている状況でも話をいただけたので光栄なこと。チームからの思いを感じたので、任せていただいたからには頑張ろうと思った」と背番号変更の経緯を説明。 「『チセらしくやっていれば、それがチセの10番になる』と言ってくれる人が多いので、自分らしくブレずにやっていきたい」とレジーナの10番のイメージを自らのプレーで築いていく。「チームがしんどい時に一番走って、点を取れる選手になる」と力を込め、「背番号と同じ10得点は取りたい」と新シーズンの目標を掲げた。 昨季は後半戦から新スタジアムにホームを移転し、WEリーグのシーズン最多合計入場者数(3万1980人)を記録した。新シーズンは1年通して新スタジアムでのホームゲーム開催となるため、記録更新に期待がかかる。 近賀は、「レジーナはWEリーグの中でずば抜けないといけない位置にいると思う。昨季は記録を出したけど、もっとずば抜けた記録で女子サッカーやWEリーグを引っ張っていく責任があると思っている」と力強く語った。 近賀自身は昨季、WEリーグカップ全6試合に出場して優勝に貢献。だが、リーグ戦は序盤の6試合の出場にとどまり、まだ新スタジアムのピッチでプレーできていない。「個人的に昨季は悔しい結果だったので、やってやろうという気持ちで臨んでいる。試合に出るだけじゃなく、試合に出て活躍することがラインなので、そこに向けて日々やっていきたい」と気合を入れた。 チームは新シーズンに向けて8月にキャンプを実施。同月末からWEリーグカップが始まり、9月に4シーズン目のWEリーグが幕を開ける。 「まずは昨季の順位を上回りたい」という吉田監督は、「結果にフォーカスしつつ魅力的なサッカーが展開できるようにしっかり準備していきたい。開幕戦で大勢のファン・サポーターの方に見にきていただいて、熱い声援を送ってもらって、勝利できるように頑張ります」と意気込んだ。 取材・文=湊昂大
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