受けた教育や性格まで伝わる!? フランスの意外な「紙名刺」事情。
世界各国で使われ方は若干異なるものの、名刺は重要なビジネスツールのひとつ。デジタル名刺が普及するなか、紙の名刺はもはや「過去の遺物」になのだろうか? それとも、いまでも人脈作りには欠かせないツールなのだろうか。フランスの名刺事情について、コミュニケーションの専門家ふたりに聞いてみた。
仕事で自己紹介をするときに、いまや2種類の人間がいるようだ。スマホを差し出し、QRコードをスキャンして連絡先をダウンロードするよう誘う人と、バッグの中をごそごそかき回し、数分後に(やや冷たい視線を浴びながらも)小さな厚紙、すなわち紙の名刺を勇ましく差し出す人だ。 紙の名刺はまだ「あり」なのだろうか? それともブロントサウルスのような絶滅種に成り果ててしまったのだろうか? 紙の名刺不要論の言い分はわかる。地球環境保護と紙の節約に繋がるし、定期異動や連絡先の変更があれば古くなってしまう。実際、若い世代は名刺がなくてもSNSを通じて簡単に連絡を取ったり、会った時に相手の連絡先を直接スマホに保存している。こうした新しいテクノロジーは紙の名刺を完全に葬り去ってしまったのだろうか?
知り合うためのツール
意外なことに、フランスの「マダム・フィガロ」がふたりの専門家を取材したところ、ふたりとも紙の名刺不要論に異を唱えた。 「名刺は媒体のせいで古臭く見えるかもしれませんが、依然として便利な存在です」と言うのは編集エージェンシー「Avec des mots(アヴェック・デ・モ)」で編集コミュニケーションコンサルタントを務めるクロエ・ジュルジャンジェだ。「名刺には必要な情報が集約されているので、誰なのかがすぐわかり、簡単に連絡が取れます」とその利点を述べる。 一方でSNSは「確かにリンクトインなどは良い連絡手段ですが、相手の名前やメールアドレスを正確に覚えておく必要があります。名前の綴りをちゃんと知らなかったために繋がるチャンスを失うのは残念なことです」 人脈作りのプロであり、人脈作りトレーニングプログラム「Le trait d'union by Isabelle Sthémer(ル・トレデュニオン・バイ・イザベル・ステメール)」を創設したイザベル・ステメールも同意見だ。「名刺交換は、ふたりが知り合ったことを可視化する象徴的な手段です。互いの人脈がつながる第一歩となります」と言う。 名刺は誰かの代理で出席しているときにとりわけ便利だ。見本市やシンポジウム、会議、懇親会、プレゼンテーションなどに行くときには名刺を何枚か持っておくといい。何百枚も刷る必要はなく、少しのストックがあればいい。「名刺の目的はビラのようにあちこちに配ることではありません。自分を知ってもらいたい相手や、その人の名刺が欲しいと思った相手に差し出すものです。自分のビジネスに興味を持ってくれる相手に渡せば、のちのち役に立つかもしれません」とクロエはその意義を語った。