大荒れ19分間ロスタイムの舞台裏に何があったのか? J審判委員会が反省総括
再開後、最短なら20秒。長くても1分ちょっとで終わるはずの試合が、延々と続く気配を見せる。リードしているヴィッセルの選手たちが次第に苛立ち始め、98分40秒すぎにはFWルーカス・ポドルスキと激しく接触したDF立田悠悟が悶絶。約3分間の治療を受けるも回復せず、ピッチ外に運ばれた後に救急搬送された。 上川氏は「明らかに警告が必要な反則」と厳しい見解を下したが、イエローカードは提示されない。しかも、立田の治療時間もさらにアディショナルタイムに加算される。荒れ模様になった試合は、エスパルスのGK六反勇治がセットプレーから頭で同点ゴールを決めた104分を境に一気にヒートアップする。 105分にはヴィッセルのFWウェリントンが、エスパルスのMF石毛秀樹へファウルを見舞う。このプレーをきっかけに両軍の選手、スタッフが入り乱れての乱闘騒ぎが勃発し、ポドルスキはエスパルスのベンチ裏で相手スタッフと小競り合いを演じるも、カードの類は提示されない。 これが収束するまでの約3分40秒も、またもや本来のアディショナルタイムを消化するための時間として加算された。そして、石毛へのファウルでイエローカードを提示されたウェリントンが、納得せずに抗議すると2枚目のイエローカードを出されて退場処分に。もはや収拾がつかない状況に陥る。 今シーズンからJ1で主審を務める37歳の柿沼主審の判断ミス。そこへ審判団のコミュニケーション不足が加わった結果、試合が3-3のドローで終わったときには時計の針は108分50秒を指していた。ヴィッセルに所属する元FCバルセロナ及びスペイン代表の至宝、MFアンドレス・イニエスタが出場していた試合とあって、前代未聞のアディショナルタイムと後味の悪い乱闘騒ぎは世界中で報じられた。 JFAの審判委員会は柿沼主審に口頭で、2人の副審と第4の審判には電話でそれぞれ確認を取り、判断が間違っていたことを伝えた。上川氏は「全員が反省しきりでした。すごく大きなニュースになったことへの責任を、すごく感じていた」とやり取りした際の様子を明かす。 ブリーフィングに出席したJFAの小川佳実審判委員長は、柿沼主審の来シーズンに関して「J1の笛を吹く、吹かないは別にして、Jリーグは担当します。ただ、どのレベルで吹かせるかは私たちの判断となります」と明言。当面はJ1よりも下のカテゴリーを担当するものと見られるなかで、今年最後のブリーフィングで問題の一戦を、20分近くの時間を割いて取り上げた意義をこう説明した。 「批判されるのが当たり前の世界なので、それを組織としてどのように消化していくか。映像などで出していくのはレフェリー(審判委員会)の立場からすれば大変なことですが、厳しく書いてもらうことにはまったく問題はありません。よりよい日本サッカーにしていくために、このような情報をすべてオープンにしていますので」 審判団のミスを認めて責めるのではなく、ミスが起こった舞台裏をつまびらかに開示。そのうえで改善策を講じながら相互理解を図ることを目的のひとつとして、レフェリーブリーフィングが導入されて3年目。そのなかでも最大の事象がどのように生かされるかは、来シーズン以降のジャッジにかかってくる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)