ヤンマーデザインは3.0へ、「本質デザイン」と「柔和剛健」でさらなる進化
ヤンマーホールディングス(ヤンマーHD)は2024年11月7日、東京都内で会見を開き、次世代ヤンマーデザインの“ありたき姿”を視覚化した「YANMAR PRODUCT VISION(YPV)」をはじめとするブランド/デザイン戦略について説明した。併せて、YPVに基づくコンセプト農機「YPV-L」などを展示する「YANMAR DESIGN みらいのけしき展」(同年11月8~15日、ヤンマー東京地下1階「HANASAKA SQUARE」)を報道陣に先行公開した。 【コンセプト農機「YPV-L」の外観】
YPVは「本質デザイン」と「柔和剛健」から構成
ヤンマーHDがデザインへの注力を開始したのは創業100周年を迎えた2012年である。奥山清行氏がデザインした次世代トラクターのコンセプトモデル「YT01」をはじめ、社外著名クリエーターの助力を得てプレミアムブランドの構築に向けた取り組みを開始した。 2015年には同社初のインハウスのデザインチームが発足。そして2022年には、製品やサービスなどのデザインにとどまらずヤンマーHD全体のブランド構築を担うブランド部が設立された。現在のスタッフ数は、デザイン部が12人、デザイン部を含めたブランド部全体で約40人となっている。このブランド部のトップを務めるのが、同社 取締役 CBO(チーフブランドオフィサー)の長屋明浩氏である。 長屋氏は「デザインに注力する起点となった2012年をヤンマーデザイン1.0とすれば、インハウスデザイン組織が発足した2015年が2.0、ブランド部を設立した2022年からは3.0になっている。ヤンマーデザイン3.0では、顧客や従業員、一般生活者も含めた全てのステークホルダーを巻き込むブランディング施策として推進する『インクルーシブブランディング』の考え方の下で、社内外のパートナーと共創し、共感するデザインでブランドイメージの醸成に取り組んでいる」と語る。 今回新たに発表したYPVは、デザイン哲学となる「本質デザイン」とデザインの方向性を示す「柔和剛健」から構成されている。本質デザインは、形や様式にとらわれず、物事の本質に迫るデザインを極めることであり、本来の機能的な価値や意味を重視する思想でもある。「かっこいいことも本質だと考えている」(長屋氏)。そして「柔和剛健」では、創業者である山岡孫吉氏の精神を受け継ぎ、柔らかく人々に寄り添いながらも、課題に力強く立ち向かうデザインを志向している。「人には優しく、課題には真摯(しんし)に強く向き合う」(同氏)という。 YPVは、この本質デザインと柔和剛健に基づき、ヤンマーHDの農業機械や建設機械、船舶(マリン)といった各事業の2035年を想定した“ありたき姿”を視覚化したビジョンである。また、YPVの中で定義された新しい意匠や設計思想などの要素については、事業を横断するヤンマーデザインとしてプラットフォーム化し、効率的な製品づくりと顧客価値向上の両立に役立てていく方針である。