老後も「イキイキ意欲的な人」と「同じことばかり繰り返す人」決定的な脳の違い
認知症になりやすい人は、脳の前頭葉の機能が衰え、意欲が低下していることが多い。意欲がなくなれば、自然と出歩くことは減り、足腰の衰えも顕著に現れる。老後を若々しく、活力に溢れた姿で生きぬくためにはどうすればいいのか。精神科医の和田秀樹氏が、すぐに始められる「前頭葉の鍛え方」を授ける。本稿は、中尾ミエ・和田秀樹『60代から女は好き勝手くらいがちょうどいい』(宝島社)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 認知症やアルツハイマー防止の カギは男性ホルモンにあり 和田:クリエイティヴな仕事をなさっている脚本家や小説家の方のなかには、男性の場合は男性ホルモンの注射、女性の場合は男性ホルモンの飲み薬をちょっと処方するだけで、かなり頭が冴えるとおっしゃる方もおられます。 中尾:ということは、認知症やアルツハイマーも防げるということですか。 和田:男性ホルモンによって本当に頭が冴えているかどうか、その因果関係はわからないのですが、男性ホルモンが減ってくると物忘れがひどくなるという報告はあります。 脳のなかにアセチルコリンという神経伝達物質があり、これが記憶や学習に関係しているのですが、アルツハイマー型認知症の患者さんのなかには、このアセチルコリンの減少がしばしば見られます。 実はこの脳内のアセチルコリンは男性ホルモンのテストステロンと相関性が高く、テストステロンが減るとアセチルコリンも減少することがわかっています。40代、50代の若年性アルツハイマー型認知症の人は、1万人に10人もいると言われています。 そのくらいの年齢で物忘れが始まったと感じるのであれば、いちど、男性ホルモンの検査をしたほうがいいと思いますね。
中尾:和田先生は、注射してらっしゃるのですか。 和田:はい、私も3カ月に1回の頻度で、注射しています。 ● 99歳で大往生の瀬戸内寂聴は 死の間際まで肉を食べていた 和田:男性ホルモンに関連して言うと、日本人は非常に良くない状況にあります。たとえば、アメリカ人は1日300グラムの肉を消費していますが、日本人は1日あたり100グラム程度の消費量です。そんなに食べていないのです。 男性ホルモンの材料はコレステロールで、多くは肉に含まれますから、それ自体、日本人はあまり摂れていません。そのせいかどうかはわかりませんが、セックスレスの夫婦・パートナーも7割に達するほどの世界有数のセックスレス大国です。 ですから、私は、わりと日本人全般、男性ホルモンが少ないのではないかと思うのです。 中尾:なるほど。長寿の人は多いけれども、それはただ単に長生きしているというだけで、健康な人、元気な人は少ないということですね。 和田:とくに男性はそうですよね。女性は閉経後に男性ホルモンが自然と増えますから、むしろ意欲的になる。だから長寿の人でも女性のほうが元気な場合が多いと思います。