「島が要塞化している」軍事強化が進む与那国島、“自立ビジョン”の実現を願う住民たちの思い
台湾花蓮市との関係性
町職員時代の田里氏は与那国町の姉妹都市、台湾花蓮(かれん)市に置いた事務所で所長を務め、定期航路の実現などに奔走していた。その花蓮市との間では、高速船で与那国と交通を開くアイデアも出てきている。 元花蓮市長の魏木村(ぎ・ぼくそん)氏は花蓮など台湾東部と沖縄の先島地域を一つの生活圏にしたいと考えている。 「台湾は医療制度が充実している。急病人を石垣島より近い台湾に運ぶこともできる。花蓮市と与那国町の密接な提携が進めばその効果は、宮古、八重山地域にも波及する。この流れを進めることは三十数年来の願い」(魏氏) その台湾では2024年1月13日に総統選挙が行われ、民進党政権の継続が決まった。親米派とされる政権継続に中国が反発し、周辺情勢が緊張しかねないという分析もある。 これに田里氏は「混乱が続くのではないかと。与那国は、国が進めている自衛隊の強化、強硬に出てくるのではないかと。台湾海峡の有事を大義名分として」と与那国への影響を危惧した。
揺れる与那国島、住民の願い
住民たちは、これから与那国島をどんな島にしていきたいと願うのか。 「人がまだ少ないので多い島にして、観光客がいっぱい来られるようにしたい」「自治への思いが強く、たくましい島なので、与那国らしさが保たれたまま人が住める場所であってほしい」「海も山もすぐ行ける。夏も朝、夕方と子どもたちと泳いでいる。本当に贅沢です。子育てには最高だと思うが、やはり医療ですね。子どもたちが帰って来たいと思える島を作らないといけない」(住民の声) 国防という大義名分に翻ろうされ続けてきた与那国島。そこに住む人々は、島の未来への思いを今も持ち続けている。 糸数氏は「この島が無人島にならずに我々が住むことがものすごく大きなこと。政府関係者にも自衛隊の増強だけじゃ駄目だと申し上げている。自衛官だけの島にしては駄目ですよと」とバランスの必要性を求めた。 一方で田里氏は「今だけの問題じゃない。これから先、子ども、孫たちのために、今平和を守らないといけない。国に対してブレーキをかけないといけない。これからも強く、訴えていきたい」と自身の思いを語った。 かつて、町民皆でまいた自立の種は、島の大地で今も芽吹くのを待っている。住民の願いが国策に押しつぶされる不条理は、この地だけで起きることではない。 (琉球朝日放送制作 テレメンタリー『潰された自立~与那国島と自衛隊配備』より) 地上波初放送日:2024年2月24日