北大とJAL、赤潮を定期便から観測 世界初
北海道大学と日本航空(JAL/JL、9201)は11月12日、世界初となる定期便の航空機を使った赤潮の観測を2025年夏から始めると発表した。JALグループで札幌の丘珠空港を拠点とする北海道エアシステム(HAC、NTH/JL)の仏ATR製ATR42-600型機の3号機(登録記号JA13HC)の機外に観測用カメラを搭載し、函館湾などで海洋観測を実施する。 【画像】HACのATR42に搭載するマルチスペクトルカメラ 北大とJALは、連携協定を2022年6月に締結。撮影した画像データを基に赤潮発生を早期に検知し、水産関係者に情報提供する。赤潮による水産業への被害を未然に防ぐとともに、将来的には森林や海洋の環境モニタリングにも広く活用することを検討している。 両者によると、赤潮を早期に検知して被害を防ぐためには、広い範囲を高い頻度で観測する必要があるという。定期便の機体は同じ飛行経路を頻繁に飛ぶため、赤潮の観測に適しているとして、活用が決まった。 HACのATR42には、機体後方下部の胴体パネル上に、観測用の「マルチスペクトルカメラ」を3台取り付ける。異なる波長の光を同時に捉え、複数の波長帯の画像を撮影できるカメラで、撮影した画像は北大に転送され、大学院水産科学研究院の笠井亮秀教授が開発した赤潮検出手法を使って可視化する。植物プランクトンが発する蛍光特性の違いを利用し、赤潮を検知するという。 海洋観測の対象路線は、丘珠-函館、函館-奥尻、丘珠-利尻の3路線。函館湾と噴火湾、奥尻海峡、利尻水道の海面を観測する予定で、当初は函館湾を観測する。 赤潮は、海中の植物プランクトンが異常増殖し、海水が赤褐色に変わる現象。魚介類が窒息死し、水産業に大きな被害をもたらすもので、地球温暖化により赤潮の発生が増えている。北海道では、2021年に97億円以上の被害が出たという。
Tadayuki YOSHIKAWA