希少疾患の治療薬、世界初の技術で開発中 起業と研究の二刀流に挑む熊本大の准教授
患者数が極めて少なく、多くの場合で有効な治療法が確立されていない「希少疾患」に対し、世界初の技術を使って治療薬の開発に挑む熊本大発のスタートアップがある。「StapleBio(ステープルバイオ)」(熊本市)だ。従来の手法では膨大な時間と費用がかかる創薬について、将来的にはどちらも大幅に減らす可能性があるという。同社を創業した勝田陽介・熊本大准教授に、研究や起業にかける思いを聞いた。 【動画】DNAが立体構造を作る?Staple核酸の技術をわかりやすく解説
勝田陽介(かつだ・ようすけ)
StapleBio共同創業者、取締役CSO 熊本大工学部准教授、同大大学院先端科学研究部准教授。名古屋市出身。大阪薬科大(現・大阪医科薬科大)を卒業後、京都大大学院(博士課程)などでDNAのナノ構造体などについて研究。2017年に熊本大の研究者となり、2021年にStapleBioを創業。
――スタートアップワールドカップ九州予選のプレゼンで、希少疾患は子どもが多く、その命を救いたいと話してしました。なぜ子どもが多いのですか。 要するに、病気のせいで大人になれなかったからなんです。大人になる前に亡くなってしまって。特に遺伝病というのは、自身のせいでもなく、どうすることもできずに人生が閉ざされてしまう不条理なもので、僕はそれを許容したくないんですね。そういった思いを込めてあのようなプレゼンになりました。 希少疾患の多くは有効な治療法が確立されていなかったり、薬がなかったりします。そんな状況は大人でもつらいのに、まして子どもがどうやって受け止めているのかと思うと、胸が痛いです。 子どもの親も自分たちを責めることがあります。遺伝病であればなおさらです。学者としてできることをしたいというのが研究の原動力になっています。 希少疾患は、僕がスタートアップワールドカップ九州予選でプレゼン資料を作っていた段階で、世界に約6千種類存在するという資料がありました。ところが最新のデータによると約7千種類に増えているようです。 希少疾患は多くの場合、遺伝子の変異が原因なのですが、遺伝子配列の解析は今の時代、それほど難しくはないので、元々奇病と言われていたものの原因がどんどんわかってきて、その結果、病名がついて希少疾患として認定されるようになっています。ただ、その原因については色々あります。