「年末調整の廃止案」に賛否両論! もしなくなったらどうなる? 年収600万円の「4人家族」を例に、メリット・デメリットを解説
先日の自民党総裁選では、公約として河野太郎氏から「年末調整の廃止」が打ち出され賛否両論が巻き起こりました。実際に年末調整が廃止されたらどうなるのでしょうか? 本記事では年末調整の仕組みを踏まえて、廃止にともなって考えられるメリットやデメリットについて具体的な世帯例を挙げて解説します。 ▼会社員で「年収1000万円」以上の割合は? 大企業ほど高年収を目指せる?
年末調整の仕組みをおさらい
年末調整とは、給与所得者の税額を年末に精算する制度です。あらかじめ源泉徴収された所得税を、年末に還付や徴収で調整します。 例えば、年収600万円の夫、専業主婦の妻、16歳未満の子どもが2人の4人家族の場合は、源泉徴収税額は20万円前後となります。年末調整で、基礎控除や生命保険料控除、住宅ローン控除(2年目以降)など各種控除を計算し、還付もしくは不足があれば徴収します。 給与支払者である企業が従業員に代わってまとめて手続きするため、給与所得者のほとんどは確定申告をする必要がありません。
河野氏の年末調整廃止の真意は?
河野氏の「年末調整廃止」の意見がひとり歩きしましたが、急に廃止するわけではありません。河野氏の考えは次の通りです。 ・国税庁、市町村、日本年金機構などに、勤務先から提出している所得関連のデータを国で一元管理する ・税務署など各機関には、国からマイナンバーに紐づけて情報連携する ・マイナンバーに情報を紐づけることで、e-Taxなどに自動入力される ・雑所得にかかる経費以外は自動入力となるので、個人の確定申告の手間が省け、事業者にとっても年末調整に関する大幅な事務コスト削減につながる このように、マイナポータルを活用した新たな仕組みが実現すれば、年末調整が廃止され国民全員が確定申告へと移行するハードルは大きく下がる可能性があります。
年末調整を廃止するメリット
実際に、河野氏の提言するようにマイナポータルと所得情報の連携が進み、簡単に確定申告できるようになった場合は、次のようなメリットが考えられます。 ・確定申告の手続きがシンプルになる ・申告ミスが減少 ・各企業内や行政の効率化 ・ペーパーレス化による環境負荷低減 現在の年末調整では控除できなかった医療費控除の情報も、医療機関から自動連携できる可能性があります。また、スマホや自宅のパソコンで、ほぼワンクリックで確定申告が完了するため、年末調整の書類を提出するよりもむしろ手間が省けるかもしれません。 企業にとっても年末調整業務がなくなるため、書類作成や交付、確認などの手間が大幅に削減されます。税務署などの行政にとっても、AIによるチェックが進めば、今よりも業務を圧縮できる可能性があります。 また、河野氏の公約では、所得情報を迅速に把握できるようになるため、タイムラグなく住民税の決定も行えるとしています。現在の仕組みでは、前年の所得により翌年6月以降の住民税額が決定するため、前年より収入が減った場合の負担が重いという問題があります。 さらに、確定申告時には税金と社会保険料の負担額も画面上で確認できるため、より納税意識が高まり、税金の使い道に関心を持つ人が増えることも期待されています。