『光る君へ』紫式部役の吉高由里子にインタビュー。まひろにとっての「道長の存在」とは?
吉高が考える「紫式部が自分のために書こうと思った理由」
─8月25日放送の第32回は、帝のために物語を書いていたまひろが自分のために書くことを決意する節目の回です。吉高さんは、なぜ紫式部が自分のために物語を書こうと思えるようになったと思いますか? 吉高:帝のために書いた物語が偽物っぽく感じたんじゃないかなと思います。自分のなかでの違和感というか、むしろ私でなくても書けるんだったら……みたいになっちゃったんだと思うんです。途中で書き方とか向き合い方を変えていったらもう帝のための物語でもなくなっちゃって、自分が面白い物語を書きたいと思ったんでしょうね。 作家さんが書きたいという気持ちにたどり着くのはすごく大変だと思うのですが、書きたい気持ちがあっても書きたいものが明確にならないと書けないじゃないですか。まひろはそこでバチッと何かに出会ったんじゃないかなと思っています。 ─第32回には、父に「女で良かった」と言われたまひろが感動するシーンがありますが、どのような気持ちで演じましたか? 吉高:あそこはすごく大事だと思います。32回分やってきて「お前が男であったらな」としか言われてこなかったまひろが、一番自分の術を認めてもらいたい人がお父さんだったと思うんですよね。物語や文学で一番認めてもらいたい人に「お前が女であってよかった」って、やっと生まれてきてよかったと思えた瞬間なんじゃないかなと。すごく大きい大きい一言だったと思いますね。 ─『源氏物語』は女性としてだからこそ書ける文学なのでしょうか? 吉高:紫式部が生きてたら聞きたいですよね。でもそうなんじゃないんですか? 女性としての視点から見ていて、政をやってる人からは見えない状況や関係性もあったと思うので。男性版紫式部が書いたらまた全然違う話になっていたと思うし、女性ならではのものなんじゃないかなと思いました。 ─まひろはなかなか結婚しなかったり、仕事をしたいと思ったり、平安貴族の女性のなかでも異質な存在であるように感じますが、吉高さんはまひろについてどう思われますか? 吉高:自分を見てるようですよね。家庭に入るのか入らないのかみたいな、女性って1回その波が来ると思うんですよね。だけど仕事を選んだ結果、結婚する想像をしなくなったりとかして。 まひろは結婚してないから幸せじゃないとか、結婚してるから幸せだとか、そういうものにとらわれないというか、そこがすべての幸せじゃないような感じがしていて。仕事が楽しいというのもあったと思いますし、まだ居場所があるからかもしれないですね。 私はそういうまひろを見て、なんでだろうとも思わなかったです。結婚しないのかとも、仕事をいつまで続けるのかとも思わないで見ていました。当時の当たり前はわからないですが、いまの令和の時代でも当たり前は変わってきてますからね。