『光る君へ』紫式部役の吉高由里子にインタビュー。まひろにとっての「道長の存在」とは?
母親役を演じる難しさと、後半の新たな挑戦
─撮影が進んだいま、当初と比べての変化などはありますか? 吉高:目で見てわかる成長は「書」かなと思いますね。作品が始まる半年以上前から、コツコツ練習してきましたが、第2回で10代のまひろが書くシーンがいっぱいあって、目も当てられない字だったと思います。いまは37~42歳までの年齢をやっていますが、役と一緒に吉高も成長したと言われているので、向き合う時間だけ、ちゃんと答えてくれるものだと思いました。 ─まひろとして文字を書いていたときと、紫式部として『源氏物語』を書くときで、字や書の練習に変化はあったのでしょうか?また、書道指導を担当した根本知先生からアドバイスはありましたか? 吉高:まひろはかな文字が中心で、道長との文通では漢字を使っていました。『源氏物語』は漢字もかなも両方出てきますし、変体仮名も出てきます。集大成が始まるという感覚がありますね。 書き続けるとその人の字の癖とかも出てくるみたいで、根本先生はそれも理解したうえで「こっちのときのほうが相性良かったね」とか「ここはこういうふうにあえてやってみよう」とか組み合わせて字を考えてくださるので面白いです。ゴルフのキャディみたいですね。 書ってすごく孤独なんです。練習時間は膨大なのに文字を書く様子を撮影する時間は30秒もしないうちに終わってしまったりとか。根本先生は練習している時間の孤独さを一番わかってくれていると思うので、相棒感が強いというか、一緒に挑戦している感じが嬉しいですね。 ─10代から始まり、母親となるまでの幅広い年齢を演じる難しさはありますか? 吉高:子供とぶつかったり、思春期を迎える娘と急に仲良くなったり、そういう家族の距離感が難しいです。自分はまだ娘という立ち位置しか人生の中では経験したことがないので。 今回は異例だと思いますね。ドラマってすごく仲の良い親子が多いじゃないですか。今作は名前で呼び合うような感じではなくてリアルだなと。ぶつかりあったりとか口きかないとか。娘と会話がないのに娘と2人のときのセリフに「……」が続くみたいな台本もあまり見たことなかったので、面白いなと思ってます。 ─ドラマの前半では書や乗馬などに挑戦しましたが、後半ではどんなことに挑戦しているでしょうか? 吉高:子供との向き合い方ですかね。子供を育てるのも初めてですし、父の藤原為時と自分が同じことをしているというような連鎖もあると思います。自分だけのことだったら「できる」「できない」の理解もあるけど、人と人となるとなんでこうなるんだろうと。 あとは作家として、物語が思い浮かぶときの筆が踊るように書けるみたいなスピード感がある自分と、思い浮かばない苦しい自分という悩みが出てくると思います。
インタビュー・テキスト by 廣田一馬