吐き気乗り越え「やっと任務遂行できた」パリ五輪。一日16時間の練習経て近代五種・佐藤大宗が磨いた万能性
パリ五輪の近代五種競技で、112年の歴史の壁を破り、日本勢初となるメダルを獲得した佐藤大宗。特徴の異なる5種目をハイレベルにこなす万能性は、どのような環境で磨かれたのだろうか。過酷なトレーニングをこなした原動力やメンタルの変化とともに、4年後への展望を語ってもらった。 (インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]、写真=YUTAKA/アフロスポーツ)
「勝つまで続ける」。“負けず嫌い”が急成長の原動力に
――小さい頃からいろいろなスポーツに触れる機会は多かったのですか? 佐藤:小さい頃は駆けっこや、友達と鬼ごっこをするぐらいでした。あとは小林寺拳法を小学校1年生から中学校2年生までやっていたのと、中学校から高校まで6年間、水泳部に所属していたぐらいで、本格的にさまざまなスポーツをしていたわけではないんです。 ――高校卒業後から五種競技を始めて、銀メダルまで駆け上がったのはすごいですね。他の人よりもここは負けていなかった、というのはどんな部分ですか? 佐藤:相当な負けず嫌いだったのはありますね。ケガをしても、ランニングで足が痛い状況でも、「競っている相手には絶対に勝ちたい」という思いが常にありました。水泳では体が疲労で痺れていても絶対に体を動かし続けるし、フェンシングは「負けたら勝つまでやる」とか……。その相手に勝つか、相手の心が折れるまでやり続けるので、相手にすると面倒くさいタイプかもしれません(笑)。でも、本格的に競技をやり始めたのが遅かったからこそ、スポーツをやったことがない人でも努力すればオリンピックで活躍できるよ、というメッセージは皆さんにお伝えしたいと思っています。 ――これから競技を始める子どもたちにとって、近代五種競技を始めるきっかけはどんなところにあると思いますか? 佐藤:近代五種と聞くと「始めるのが難しそう」と思う人もいるかもしれないですけど、まず水泳やランニングを始めてみるとか、始まりはどこからでもいいんですよ。「フェンシングをやったことがある」とか「お祭りで射的をやったら得意だった」という人でも始められる競技です。2028年から馬術に代わって新種目になる「オブスタクル」は「SASUKE」のようなルールなので、運動神経がいい人は、その力を他の競技にもつなげられるか、チャレンジしてみてほしいですね。自分は高校卒業後に海上自衛隊に入ってから本格的に近代五種を始めましたが、やっていくうちに「すべてをマスターしたい」という気持ちに変わってどんどん上達していったので、ぜひ、皆さんにもそのきっかけを見つけてほしいです。