黒谷和紙と輪島塗の作家が語る「伝統工藝が人の希望になる」理由とは?輪島塗復興への思い
八百年の歴史をもつ「黒谷和紙」の産地、京都・綾部で、原材料である楮(こうぞ)を自ら栽培し、手漉き和紙の作品制作を手掛けるハタノワタルさんの個展「黒谷和紙作家ハタノワタル個展『おかえり』」が、東京・代官山の「ギャラリーオンザヒル」で開催中です。2024年2月10日、石川・輪島を拠点に活動する塗師の赤木明登さんをゲストに迎え、展覧会を記念したトークイベントが開催されました。 古来、日本人が育んできた和紙と漆器の文化。自然と共生しながらもの作りを行うふたりが、工藝とは何か?美しいものを生み出すとはどういうことか?について語り合いました。 <写真左>ハタノワタル(黒谷和紙作家)●1971年兵庫県淡路島生まれ。多摩美術大学で油絵を学ぶ中「日本一強い紙」黒谷和紙に出合い、卒業後、黒谷和紙協同組合の研修生に。10年後に独立、和紙作家としての活動をスタート。現在は、自ら楮を育てて紙を漉き、平面作品や立体作品の制作、内装施工や空間設計も手掛け、新たな和紙の可能性を追求。 <右>赤木明登(塗師)●1962年岡山県生まれ。中央大学文学部哲学科を卒業後、出版社に就職。88年に輪島に移住し、輪島塗の下地職人・岡本進氏のもとで修業後、94年に独立。自身の半生を綴った『漆 塗師物語』(文藝春秋)や、人気クリエイターを訪ねて「美しいものとは何か」と対話を重ねたエッセイ『美しいもの』(新潮社)など著作も多数執筆。23年には一日1組限定の日本料理のオーベルジュ「茶寮 杣径(そまみち)」をオープンし、出版社「拙考(せっこう)編集室」を立ち上げた。
職人では暮らしていけない?職人であること、作家であること
2012年11月に香川県高松市で2日間開催された「瀬戸内生活工芸祭2012」で、赤城さんは地元の人たちに呼びかけ、蔵などに眠っていた漆の器を集めて展示をしました。重要文化財、披雲閣の大広間にずらりと並んだ漆の器はなんと8000個! ハタノ: 僕が赤木さんの作品を初めて見たのは、2012年に香川県で開かれた「瀬戸内生活工芸祭2012」でした。僕もそこに出展していたのですが、展示の中でものすごく感動したのが赤木さんの作品だったんです。大広間に輪島塗の器をだーっと並べていて。 「赤木明登」の名前で、輪島塗の職人さんの器を「作品」として並べていたことにものすごく感動したんです。土地に根差した工藝というものを、どう捉えているかというところに共感する部分を感じたというか。僕自身「黒谷和紙作家ハタノワタル」として展覧会をやっていますが、「ハタノワタル」個人ではなく、あくまで「黒谷和紙」が前に出ることに意味があると思っているんです。 <写真>瀬戸内生活工芸祭2012 赤木明登さんの展示風景。(写真提供:ゆうさかな(物語を届けるしごと)