三重・桑名でカスハラ防止条例が可決 全国初、行為者の氏名公表へ
客から理不尽な迷惑行為を受けるカスタマーハラスメント(カスハラ)が社会問題となる中、行為者の名前を公表できる規定を盛り込んだ三重県桑名市のカスハラ防止条例案が25日、同市議会で賛成多数で可決された。氏名公表という制裁手段で実効性を持たせるカスハラ条例は全国の自治体で初めてという。来年4月から施行される。 可決後、伊藤徳宇市長は「氏名公表は非常に重い行為と思うが、カスハラを防止する法律がない中、基礎自治体としてできるギリギリの対策だ」と述べ、理解を求めた。 条例では、事業者からの要求を受け、有識者らで構成する「対策委員会」が行為者の言動を調査。カスハラと認定され、市が警告を出しても従わない場合に行為者や対策委から意見聴取した上で名前などを公表する。 一方、氏名の公表は社会的な影響が大きいため、市議会の委員会では「厳格な取り扱いが求められる」として、これから条例運営の細部を定める「規則」の素案を議会に説明するよう求める付帯決議がついた。 これまでの委員会審議で、市は氏名のほか、大字までの住所や年代をホームページで1カ月程度公表する方針を明らかにし、カスハラの被害対象となる事業者には、企業だけでなく学校や官公庁なども含まれるとの見解を示している。 また、条例ではカスハラを「客の言動による要求内容に妥当性がない」などと定義しているものの抽象的なため、カスハラの具体的な事例集を作成する方針だ。ただ、カスハラと苦情の線引きは微妙な面もあり、対策委の審議では任意調査の中で、いかに事業者、行為者の双方から正確な情報を集め、客観的に判断できるかがポイントになりそうだ。 条例案の採決は賛成19、反対6の賛成多数だった。伊藤市長は「事業者に安心して働いてもらうため、大きな一歩を踏み出すことができた。委員会の付帯決議を真摯(しんし)に受け止め、規則を制定する際は議会に丁寧に説明したい」と述べ、国に対しては「一刻も早くカスハラ防止法を制定してもらいたい」と注文した。【松本宣良】