【チューリップ賞回顧】スウィープフィートが祖母スイープトウショウに続く 過酷な序盤を乗り切ったセキトバイースト
昨年と同じ状況も正反対の流れ
最重要トライアルに阪神JF上位馬が不在なのは昨年と同じ状況だった。昨年はモズメイメイが絶妙なペース配分で逃げ切り、今年はスウィープフィートが追い込みを決めた。どちらも騎乗したのは武豊騎手。偶然だろうか。軸不在のトライアル。混戦だからこそ、名手のエスコートがプラスαとなる。 【弥生賞2024 推奨馬】前走タイムは世代屈指の好タイム、複勝率50%データにも該当! SPAIA編集部の推奨馬を紹介(SPAIA) だが、このふたつのレースは時計がかなり違った。昨年は良馬場で1.34.0、今年は稍重で1.33.1と速かった。昨年の阪神は開幕が2月2週目と早く、今年は通常の2月末開幕だったという点も考慮しないといけないが、そもそも流れがまったくちがう。昨年の前後半800mは47.5-46.5、序盤600m35.2とモズメイメイの思う壺でレースは進んだ。対して今年は前後半800m46.0-47.1で序盤600m34.5と逃げたセキトバイーストは過酷な序盤を乗り切って、2着に粘った。 全馬、桜花賞出走には権利獲得が必要な状況であり、なおかつ力関係は拮抗していた。自分の馬を3着以内に入れる。そんな自信となんとかしなければという使命感が混じりあった心理から、逃げるセキトバイーストを追いかける好位勢が大集団を形成した。いわゆる前がかりの展開になり、セキトバイーストは中盤で緩める瞬間がなかった。またセキトバイースト自身も権利を勝ちとるには行くだけ行って位置取りを生かすしかない。そんな決意を感じる逃げだった。その逃げについていった結果、好位勢は最後に伸びあぐね、追い込み決着を誘発した。 逃げ馬が2着に粘り、権利をつかんだことで、桜花賞も過酷なレースになる公算が高まった。得てしてトライアルで飛ばした逃げ馬が本番でゆったり入ることもあるので、ハイペース確定というのは早計だが、そんな点も桜花賞までじっくり考えていこう。まだ時間はある。
スイープトウショウから20年
前がかりを制したのはスウィープフィート。デビューから永島まなみ騎手が乗り、競馬を教えていった。阪神JF7着、エルフィンS2着。前走、ライトバックに競り勝っていればという内容。GⅠへの手応えをつかみつつも、賞金を手にできなかったというもどかしい状況でチューリップ賞を迎えた。切り札として依頼を受けた武豊騎手が一発で重賞タイトルをつかんだ。さすがは名手。さらっとやってのけた。 前走は好位から最後に差されたが、今回は一転して後方から。前が忙しくなるのを読みきった。とはいえ、好位追走から後方一気。脚質転換はやろうと思っても簡単ではなく、馬自身に高い能力と賢さがあり、かつ以前、差す競馬を経験させていたことが大きい。永島騎手の教えたことがなければ、今回の重賞制覇はなかった。 個人的にスウィープフィートの桜花賞出走は感慨深い。母の母スイープトウショウは2004年、チューリップ賞を制し、2番人気で桜花賞を迎えた。20年の時を経て、孫娘が同じ道を進もうとしている。勝手に親戚気分に浸らせてもらった。スイープトウショウはGⅠ・3勝。本格化したのは3歳秋から4歳にかけて。宝塚記念で牡馬の一線級をねじ伏せた末脚は鮮烈だった。調教で馬場入りを嫌がり、返し馬もできないほど動かないときがあった頑固な牝馬だったが、池添謙一騎手をはじめ周囲の辛抱強さが才能を開かせた。 孫娘にそんな気の強さは伝わっていないかもしれないが、やはり周囲の支えによって、桜花賞出走にたどり着いた。祖母と同じくまだまだこれからさらに強くなるだろう。スイープトウショウに流れるダンシングブレーヴの血が再び騒ぎそうな予感がある。