議会通さず2000万円超の物品購入、議決「要さない」と誤認…背景に価格上昇の「デジタル教科書」
新潟県内の自治体で、地方自治法などで定められている議会の議決を経ずに物品を購入する事例が相次いでいる。特に目立つのが小中学校の教師用指導書で、デジタル教科書の導入による購入価格の上昇が背景にある。「消耗品」で議決が不要と誤認していた例もあり、県が市町村に注意を促す事態となっている。(家田晃成)
担当者が誤認
「条例に規定している議会の議決要件を経ずに予算を執行していた。著しく信用を失墜させることになった」。今月7日、村上市の高橋邦芳市長は記者会見で頭を下げて謝罪した。
同市は2015~19年度、小学校の教師用指導書の購入や市指定ゴミ袋の発注に関する計6件の契約で、必要となる市議会の議決を経ていなかった。
市の担当者は、「取得した物品が消耗品で、議決を要する財産には当たらないと誤認していた」と説明した。
各自治体は地方自治法に基づき、一定額以上の財産の取得は議会の議決に付すことを条例で定めている。自治体によって額は異なり、同市の場合、予定価格2000万円以上の動産の買い入れは議決を要する。
今回ミスが発覚した6件の契約は予定価格がいずれも2000万円を超え、計約1億8000万円に上った。市は19日に開かれた市議会臨時会で追認の議案を提出し、可決された。
指導書で多発
同様の事例は9月以降、県内で相次いで発覚している。読売新聞の取材では、少なくとも9市町で議決漏れがあった。
対象の物品は、除雪車(新発田市、燕市)、移動書架(燕市)、パソコンと電子黒板(佐渡市)などと多岐にわたるが、中でも小中学校の教師用指導書の購入契約で多発。村上市のほか、南魚沼、阿賀野、聖籠、燕、十日町、津南の6市町で議決を経ていなかった。
背景にあるのが、デジタル教科書の導入だ。阿賀野市では、これまで教師用指導書の購入で議決が必要となる2000万円を超えることはなかったが、今年度は前回購入した20年度の約2倍の約2400万円へと膨れあがった。