霞ヶ関キャピタル、冷凍自動倉庫が本稼働 「三位一体」で需要獲得
霞ヶ関キャピタルは今年9月以降、賃貸型冷凍自動倉庫の展開を本格化している。冷凍自動倉庫の第一号案件として今年9月に「LOGI FLAG TECH 所沢Ⅰ」の竣工式が行われた。 冷凍自動倉庫の展開はこれまでの物流事業と少し異なる。開発は同社などが担い、庫内運営は子会社のX NETWORK(クロスネットワーク)と3PL企業など3社が行い、三位一体で冷凍・冷蔵の需要を獲得していく予定だ。「LOGI FLAG TECH 所沢Ⅰ」は、3PL企業のSBSゼンツウが庫内の荷役を担う形となっている。 <鍵を握る「システム」> 霞ヶ関キャピタルの冷凍自動倉庫は、物流の2024年問題や、2030年のフロン規制を考慮した、先を見据えた倉庫として注目を浴びる。「冷凍特化や自動化などの仕組みと設計も重要だが、実はシステムが鍵を握っている」(霞ヶ関キャピタル・杉本亮副社長)と強調する。 倉庫と連携するシステムは、入出荷依頼や在庫管理などをウェブ上で操作可能とする独自開発のプラットフォームとなる。冷凍保管サービス「COLD X NETWORK(コールドクロスネットワーク)」の新しいサービスは、クロスネットワーク社が提供している。 ユーザーの登録から、受発注、在庫管理までを全てウェブで完結できるサービスで、システム自体の汎用性も高く、使いやすさという点もポイントだ。単純に倉庫を利用する荷主だけでなく、3PL企業も活用できる。システム連携のメリットが生かせるため、ケースバイケースで倉庫を利用できる点も武器となっている。 冷凍保管サービス「コールドクロスネットワーク」は11月1日から、ユーザー専用サイトを公開し、スペース予約の受付など一部サービスを始めた。入出荷依頼の指定日時は、今年11月15日から対応する予定だ。 <所沢は4190パレット> 「LOGI FLAG TECH 所沢Ⅰ」を含む冷凍自動倉庫の庫内管理はパレット単位で行う。第一号案件となる所沢の倉庫容量は4190パレットだ。 1パレットのサイズは、縦横1100㍉㍍、高さは150㍉㍍。対応できる荷物は縦横がパレットと同じサイズ、高さが1.5㍍まで、重量制限は600㌔㌘までとなる。 庫内1階を入出庫や荷捌きエリアとし、垂直搬送機で荷物を載せたパレットが冷凍エリアの2階に運ばれ、保管される。運搬された荷物は保管ラックやスタッカークレーンで保管される設計だ。 特徴的なのは、2階エリアを奥行き50㍍、横30㍍、高さ20㍍の吹き抜け構造にしている点だ。所沢に限らず、他の開発物件も2階以上を吹き抜け構造にする設計で、多くの荷物を保管できるようにしている。建設や設備コストの削減にも貢献する新しい開発の形を体現している。 所沢に限らず、冷凍自動倉庫の稼働時間は24時間をベースとする。開業当初は営業時間を9時から18時だったが、徐々に24時間体制に移す予定だ。 <料金体系は2種類> 冷凍倉庫は近年、冷凍食品市場の拡大が追い風となって需要が高まっている。管理コストなどは荷主に限らず物流事業者も注視しているポイントだ。 クロスネットワークが提供する料金体系は、中長期で預けられる「スペース確保型」と、来年1月に提供予定の1パレット1日単位で利用できる「従量課金制」だ。2種類の料金体系にすることで顧客の予算や要望に応じた柔軟なプランを組めるようにするのが狙いだ。 倉庫を利用するシーンが多様化している背景もある。「新しい事業などで冷凍保管スペースが欲しい」「移転や建て替えの一時保管先」「イベントや繁忙期による外部倉庫の必要性」など、多様化する需要に対して幅広く対応できるようにする。イベントや繁忙期の利用においては、おせちやケーキなどの需要があり、すでに相談や引き合いが多くある。 スペース確保型の料金は「入出荷費」「保管費」ともに荷主や借主である倉庫主ごとに設定する。従量課金制は入荷費が1パレット1250円、1ケース110円。保管費は基準単価として1パレット1日当たり330円からとなっている。 <全国展開し拠点をつなぐ> 冷凍に対応できる倉庫の温度帯はマイナス20度もあれば、25度や30度と各社でそれぞれ違いがある。同社が展開する冷凍自動倉庫の温度設定はマイナス25度。冷凍食品などを中心に、密封された肉類や魚、アイスなどの荷物に対応する。 生産地エリアなどで展開することで、生鮮品生産者の保管場所としても利用できるようにして、冷凍倉庫の開発を全国的に広げる計画としている。 霞ヶ関キャピタルとクロスネットワークが目指すのは、各所で開発した物流拠点の情報を連携し、物流の2024年問題の解決と物流の最適化や効率化、コスト削減に貢献していくことだ。 物流業界の流れは、倉庫開発などのハード面から、荷主や物流事業者に最適なサービスを展開するソフトサービスの提供にシフトしつつある。クロスネットワーク社が提供する冷凍保管サービス「「コールドクロスネットワーク」」の導入によって、霞ヶ関キャピタルの物流開発と倉庫運営に弾みをつけたい考えだ。 すでに、霞ヶ関キャピタルは10月末にも、所沢に続く冷凍自動倉庫の第2号案件として「LOGI FLAG TECH 八戸Ⅰ」を竣工した。ほかにも主要エリアでの開発を進めており、冷凍自動倉庫の運営を点から線にシフトしていく。「冷凍自動倉庫」「コールドクロスネットワーク」「拠点拡大による全体の物流効率」の3つの武器に、荷主や倉庫主に新たなロジスティクスの価値を提供していく。
日本ネット経済新聞