「ネトゲのフレが死んだ…」訃報が届いた友人がオンラインゲームにログイン…?「亡くなった息子の事を知りたくて」……その正体はなんと友人の父親だった【作者インタビュー】
お互いの素性は知らなくても、一緒に遊ぶ友人はかけがえのない存在。オンラインゲーム仲間の訃報が届いたあと、彼の父を名乗る人物が友人のアカウントでログインしてきて――。不二丘いつき(@fujioka2020)さんの創作漫画「死んだネトゲのフレの父」は、2023年11月、X上に投稿され2.7万件を超えるいいねを集めたオリジナル作品だ。 【漫画】本編を読む サービス終了を控えるオンラインゲームで、一緒に遊んでいた顔も本名も知らない友人を亡くした主人公。ある日、もう動くはずのない友人のキャラクター“コーラル”を使い、「亡くなった息子の事を知りたくて」と彼の父親がログインしてくる。“シャド”というキャラクターに扮する主人公は本当に父なのかを疑いつつも、友人の足跡を辿るようにゲーム世界の案内を始め…というストーリーだ。読者からは「滅茶苦茶泣けるすてきな話」と反響を呼んだ同作の舞台裏を、作者の不二丘いつきさんに聞いた。 ■顔も本名も知らない友人との絆に「滅茶苦茶泣けるすてきな話」だと大反響 ゲームのキャラメイクではバリエーションに限りがある中で、どうしても同じ顔のキャラクターと何度も出会うのがオンラインゲームあるあるではある。作者の不二丘さんにキャラクターの描き方でこだわった点を聞いてみると、プレイヤーごとの動かし方によってキャラクターが別人に見えることを意識して描いているそう。「序盤で無表情のNPCコーラルを登場させることで、本物のコーラルや父親が操作するコーラルとの差別化を鮮明にすることも狙いだった」と話してくれた。 本作の舞台となる架空のオンラインゲーム「神獣オンライン」の世界観は、東南アジアをイメージしてデザインされたとのこと。中でもサガリバナのシーンは、不二丘氏のお気に入りだという。博物館で資料を見た際、その美しさと儚さに感動し、いつか漫画で描きたいと考えていたそうだ。 作者自身もオンラインゲームをプレイしているそうだが、長く遊んでいるとデータを残したままログインしなくなるフレンドも増えてくる。しかし、ゲームをきっかけにSNSでもつながった人とはゲーム以外の場所でも楽しみを共有することもできるといい、「そこからたとえ大切なものをなくしてもそれは無駄ではないし、思い出が次の喜びを作っていく」と話してくれた。その考え方が 「サービスが終了する」「プレイヤーが亡くなる」という二つの喪失を経ても、新たな友人を迎え、新たな世界で旅をするという結末につながっているのだろう。 本作を描くにあたって「普段つながることがない年齢・職業・住所がばらばらの人たちが交流していく楽しさ、そんな人たちみんなが抱える悲しみに力を合わせて向き合っていく強さ」を目指したという不二丘さん。「子どもも大人も明日に希望をもてるような漫画を目指して、これからもコツコツ描いていきます」と今後の抱負を語ってくれた。興味のある人はぜチェックしてみてほしい。 取材協力:不二丘いつき(@fujioka2020)