中国「独身の日」取引額は約31兆円 EC大手は海外進出に注力へ【WBS】
15日に発表された中国の10月の小売売上高は1年前と比べて4.8%の増加となりました。不動産不況が長期化する中、毎年恒例の一大消費イベントである「独身の日」セールが展開され、その取引額が30兆円を超えました。中国の消費は復活したのでしょうか? 11日まで開かれた中国のネット通販で最大のイベント「独身の日セール」。かつては数日間だけのセールでしたが、消費の底上げを狙うべく、今年はおよそ1カ月まで期間が拡大されました。ネット通販最大手「アリババ」は300億元(約6450億円)もの割引券を配布しました。 「ネットの通販サイトを見ると、政府のクーポンというページがあります。実際に押してみますと、各エリアが選べるようになっています。例えば上海を選択すると、上海の家電買い替え政策というページになりました。家電の買い替えをすると最大20%の割引が受けられると書いてあります」(上海支局の菅野陽平記者) 政府の補助金も追い風となり、セール期間の各プラットフォームの取引額は合計で約31兆円と去年より約27%増えました。15日に発表された10月の経済統計でも、小売売上高は1年前に比べて4.8%のプラスと、前の月より大きく改善。中でも家電製品は約4割も上昇しています。 セールに参加したパナソニックでは洗濯機や冷蔵庫など、補助金の対象商品を中心に売れ行きが好調だったといいます。ただパナソニックHDの本間哲郎副社長は「多くの専門家が指摘するように、単なる需要の先食いという話がある」と話します。
EC大手は海外進出に注力
懸念も残る一方で、新たな市場に活路を見出す中国企業もあります。深圳に本社を置く「Ulike」。家庭向けの美容機器で急成長中のブランドです。 独身の日セール真っ只中に本社の研究開発センターでは、特殊な光と優れた冷却機能によって痛みを抑えながらムダ毛ケアができるという主力商品の美容機器を、販売を担当するインフルエンサーが体験していました。その売り先は中国ではなく、マレーシアです。 「東南アジアの人口は非常に多く、6.8億人いる上にECの割合も上昇している。売り上げの成長率は去年より約2~3倍に上がっている」(「Ulike」東南アジア市場担当の袁媛さん) 海外販売の割合は、売り上げ全体のまだ1割弱。これを2年以内に半分にまで引き上げるとしています。 こうした動きを後押しするのがアリババです。国内の消費低迷やネット通販の成熟を受け、企業の海外進出を様々な面で支援しています。 「中国のECはすでに成熟しつつあるが、海外の発展の余地はより大きい。すでに12以上の国・地域で大量の商品に送料優遇サービスを提供している」(「アリババ」タオバオ天猫海外事業部の葉剣秋社長) 配送の利便性強化に加え、通販サイトの多言語化を進めるなど、多額の投資をしているといいます。さらに先月には、日本で新たなネット通販のプラットフォーム「TAO」をスタート。アパレルや雑貨などを中心におよそ300万点以上を取り扱います。AIが客の好みを分析し、その人に合った商品を提案します。 「TAOにはAIアルゴリズムがある。ユーザーの行動に基づき最適な商品をおすすめするので、ユーザーに“ワオ”という驚きを与える」(「アリババ」TAO市場運営責任者の劉彗娟さん) 中国からは「Temu」や「SHEIN」が格安商品を武器にサービスを展開していますが、劉さんは「SHEINやTemuは非常に安く、多くの問題がある。日本の客が関心を持つのは商品の安全と品質。これに対しても厳格に管理している。私たちは日本専門のカスタマーサポートチームを持ち、日本に現地法人も設立した」と話していました。 ※ワールドビジネスサテライト