「遺骸」に込められた意味とは? 新世代の旗手が見せる圧巻のパフォーマンスを体験せよ
10月4日の幕開けより1カ月以上にわたり開催されてきたダンスフェスティバル「ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル」がまもなく終幕を迎える。大トリを務めるのが、新世代の騎手として注目を集めているポルトガル出身の振付家、マルコ・ダ・シルヴァ・フェレイラだ。初来日公演で披露される『CARCAÇA(カルカサ)』は、11月15日と16日にロームシアター京都で催される。 【写真】骨格だけになった死体を意味するダンスとは?
今日、マルコ・ダ・シウヴァ・フェレイラの新作やレパートリー作品が各地で招聘されている。彼は、ハイパフォーマンススポーツ(水泳)で鍛えた身体を活かし、ダンスの世界で躍動する。10代の後半にストリートダンスから始めて、ポッピングやニュースタイルなどアフリカ系アメリカ人のダンス、またクドゥーロ(ポルトガルへの移民が多いアンゴラ=旧植民地の音楽)の踊りを独自に身につける。 彼がコンテンポラリーダンスへ関心を寄せたのは20歳を過ぎてから。表現の境界を限らずに「物」をつくり出せる可能性に魅力を感じたそうだ。ダンスの語彙を増幅させた彼は、TVショーコンテストなどでも賞を勝ち取り、ダンサーとして世界的に著名な振付家と仕事をするようになる。振付を開始し、6作目の『Hu(r)mano』で評価を固める。出演者は彼とコンテクストの近い(当時まだこの言葉が使われていた)「Urban dance」のダンサーたちで、コンテンポラリーのセンスと合わせた表現が欧州の劇場舞踊界に新奇さを注入したようだ。 今回の『CARCAÇA』のタイトルは、振付家によるとポルトガル語で動物の遺骸(骨となった死体)を意味する。自身を含む10名のダンサーがさまざまなスタイルの踊りを舞台にのせ、ライブ演奏と切り結ぶ。彼いわく、たとえば足技には、いくつかのポルトガルのフォークダンス、ヨーロッパの歴史、アフリカンダンスのかたち、アメリカのストリートダンスのステップが響き合っている。個人や集団で披露される、この生ける踊りの時間に透けて現れるのはなにか?
文:富田大介(明治学院大学文学部芸術学科准教授)