なぜ阪神は「9月失速病」を克服できないのか?
4.ベンチの采配ミス説 ベンチの采配ミスが、1点を争う勝負どころで勝敗を分ける致命傷となってしまうケースも目につく。6日の中日戦では、0-0で迎えた7回、6番に入っていた先頭の今成がヒット出塁すると、ベンチは続く伊藤隼に送りバントを命じた。得点圏に走者を進めたが、8番・藤井をそのまま打たせ、9番のピッチャーの岩崎にも代打を出さなかった。結局、その裏、岩崎が崩れて失点、試合は敗れた。代打攻勢の腹つもりがなければ、伊藤隼はバントでなく強行だろう。ベンチのちぐはぐな采配の迷いが勝敗を分けてしまった。 また、この広島3連戦では、エルドレッドに2戦連発を浴びた。和田監督も「同じやられ方はよくない」と苦言を呈してが、13日の先制アーチはカウントを追い込んでからのストレート。ノムさんは「防げるホームランだった」と、テレビのスポーツ番組で語っていたが、明らかに藤井の配球ミス。これも、ベンチの指示が徹底がされていなかったことによる綻びだろう。 以上が、筆者の「阪神の9月失速病」の原因分析だが、阪神OBで評論家の池田親興氏に、なぜ9月に阪神が勝てないのかの分析を聞いてみた。 「いくつか理由は考えられるが、そのひとつに準備不足というものがあるだろう。13日の広島戦で仕掛けられたダブルスチールで、ピッチャーカットができなかったのも、事前の確認作業が欠けていたから。どのチームにもミスやエラーというものがつき物だが、それをどう防ぐか、どう防ぐ準備をしていたのかという部分が重要になる。チームの責任だ。 ただ、現状、セ・リーグの上位3チームは、どこも決め手がない。あえて言えば、阪神の投手力と、ヤクルトの打撃力だろう。と考えると、阪神はいかに点を取るかがポイントになる。まだ9月は終わっていない。9月に阪神が弱いと評価するのは早すぎると思う。マートン、ゴメスという外国人2人が打線復調のカギだろうが、私には、首脳陣とのコミュニケーションが足りていないように見える」 確かに「9月失速病」と書くのは、まだ早い。 藤浪、メッセンジャー、岩田、能見、岩崎の5人には計算が立つ。巨人、ヤクルトと比べても、ここが阪神の大きなプライオリティだろう。問題は打線をどうするか。特にマートンとゴメスの2人。馬鹿のひとつ覚えのように振り回していたゴメスに、少しセンターから右へを意識する打席が出てきたことはいい兆候だが、彼に期待されているのはホームラン。 そして、マートンが、今さら、ストライクゾーンストレスで調子を下げてはどうしようもない。まだ取り返しのつく間に、打撃不振だけでなく、守備や走塁で足を引っ張っているマートンをファームへ落とし、下で結果を出している第6の外国人のペレスを昇格させて使うのも一手ではないだろうか。 だが、池田氏は「その手を打つならもっと早い段階で行うべきだろう。1軍のレベルでは、未知のペレスよりも、今は打てなくとも、マートンの実績の方が、相手バッテリーにはプレッシャーになる。マートンやゴメスの体調に問題がなければ、思い切った入れ替えは厳しいだろう」という見方をしている。 いずれにしろ勝負は9月18日からの12連戦。「9月失速病」からの脱却となるか。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)