物流の2024年問題、約7割の企業でマイナス見込む
(2024年問題に対する企業の意識調査)
建設業、トラック・バス・タクシードライバー、医師などの「働き方改革」を進めるため、これまで適用が猶予されていた時間外労働の上限規制が、いよいよ2024年4月より適用されます。 長時間労働が是正されることにより健康被害や労働災害、交通事故の削減など労働環境の改善が進展することが期待できる一方で、人手不足による工期の長期化や業務の停滞などの諸問題、いわゆる「2024年問題」も懸念されています。 とりわけ、運送業界においては、物流を担う運送事業者だけの問題ではなく、産業を問わず幅広い業界や消費者の日常生活にも変化が生じるでしょう。 そこで、帝国データバンクは、2024年問題に対する企業の見解について調査しました。
「2024年問題」全般への影響、約6割の企業でマイナスを見込む
「2024年問題」全般について「マイナスの影響がある」企業は59.9%となりました。他方、「影響はない」は22.3%、「プラスの影響がある」は1.6%でした。 さらに、物流の2024年問題に限ると、「マイナスの影響がある」企業は68.6%と7割近くとなりました。 特に、『卸売』(79.6%)や『農・林・水産』(78.9%)など6業界で7割超の企業がマイナスの影響を見込んでいます。 企業からは「物流コストが増加すれば、製品単価の上昇につながり、景気は後退する」(繊維・繊維製品・服飾品卸売)や「現状も部材不足の納期遅延が多い。物流問題が生産計画に波及し、さらに悪化するかもしれない」(電気機械製造)といった声があがっています。 他方、企業の1.5%では「プラスの影響がある」としており、「長い目で見れば自由な時間が増えるため、若い人も入りやすくなり、運送業界にとっても良いはず」(鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売)といった前向きな声が寄せられていました。
物流の2024年問題への対応策、「運送費の値上げ(受け入れ)」が43.3%でトップ
「2024年問題」のうち、特に物流の2024年問題に対して、「対応がある(予定を含む)」企業は62.7%でした。 他方、「特に対応しない」企業は26.4%と4社に1社となっています。 さらに、「対応がある(予定を含む)」とした企業の具体的な対応策は、「運送費の値上げ(受け入れ)」が43.3%でトップとなりました(複数回答、以下同)。 次いで、「スケジュールの見直し」(36.3%)や「運送事業者の確保」(24.9%)、「発着荷主と運送事業者双方での連携強化」(24.2%)、DXなど「業務のシステム化や効率化の推進」(20.0%)が上位に並んでいます。 業界別では、「運送費の値上げ(受け入れ)」は『運輸・倉庫』(51.5%)、『卸売』(50.2%)、『農・林・水産』(50.0%)で5割以上となっており、企業からも「物流コストアップは交渉により抑制したいが、一定程度は受け入れる」(広告関連)といった声があがっていました。 そのほか、DXなど「業務のシステム化や効率化の推進」は、『金融』(44.4%)や『不動産』(28.3%)、『サービス』(27.5%)で高く、「ドライバーの確保・育成」では、『運輸・倉庫』が53.6%と突出して高い結果となりました。 また、「荷待ち・荷役時間の把握・削減」は、『運輸・倉庫』が32.4%と最も高く、『製造』(12.2%)や『農・林・水産』(9.1%)が続きますが、総じて荷主側企業からの対策意識が低い様子がうかがえます。 企業からも「時間指定の縛りや、荷役作業に対する荷主側の意識改革がなされない限り、根本的な解決にならない」(紙類・文具・書籍卸売)といった厳しい声が聞かれました。