【タイ移住】仕事はパソコン1台でフルリモート!50歳でかなえたチェンマイでの理想の暮らし
50歳にして念願のタイ・チェンマイ移住をかなえ、自身のことや移住にまつわる情報をブログ「mariblog」で発信するmariさん。移住にいたった経緯をはじめ、過去・現在の仕事のこと、チェンマイでのお金事情、毎日の暮らしぶりなどを紹介する。 【もっと写真を見る】
首都・バンコクより北へ約720㎞に位置する、タイ第2の都市・チェンマイでの暮らしや、海外移住にまつわる情報をブログで発信しているmariさん。若いころにバックパッカーとしてアジア各国を旅していた彼女は、チェンマイで現在のタイ人の夫と出会い結婚。その後は日本で育児に仕事にと忙しい日々を送っていたが、50歳の時にかねてからの夢だったチェンマイへの移住というライフシフトを果たした。現在はパソコン1台で働きながらストレスフリーな毎日を過ごすmariさんに、ご自身の経験を交えながら、タイ移住にまつわるリアルを聞いてみた。 学生時代に訪れたチェンマイでの運命の出会いが、数十年後の移住へとつながる 1972年生まれのmariさんが初めてチェンマイを訪れたのは、慶應義塾大学の大学院生だった時のこと。一瞬でチェンマイのとりことなったmariさんだが、それ以外にものちの人生を変えることとなる出会いがあった。 「学生時代にバックパッカーでアジア各国をまわり、一番好きな街がチェンマイでした。バンコクほど人も多くなく、山が見えて、旧市街など古い町並みが残っていることも、都会暮らしだった私にはとても魅力的に見えました。結果的にチェンマイで今の夫と出会ったのですが、彼は9人兄弟の大家族。家族みんな近くに暮らしていて、とにかく彼の家族によくしてもらい、ますますチェンマイとそこで暮らす人が好きになりました。移住してからも、ベトナムやスリランカへ旅し、東京にも一時帰国しましたが、やはりここが一番好きです。ベトナムやスリランカだと私には少し不便すぎて。旅行で訪れる分には楽しいのですが、生活するとなると少し大変。タイは私が初めて訪れてから急速に経済発展し、だいぶ暮らしが便利になりましたが、それでもチェンマイには田舎の雰囲気が残っていて、便利さとゆったりとした暮らしのバランスがとてもよいと感じています」 そのようにチェンマイの魅力を語ってくれるmariさんだが、26歳で現地の男性と結婚した当時のタイは給与水準も低かったため、日本で働くことを決断。そして、20代のうちに2人の息子を出産した。 「2人の息子がいるのですが長男12歳、次男9歳の時に、子ども2人だけでタイへ。夫の家族に面倒を見てもらいながらチェンマイのインターナショナルスクールに入学させました。2人とも高校を卒業後、インタープログラムのあるチェンマイの大学に進んでいます。その間、私と夫は日本で暮らし、子供たちは毎年夏休みに日本に帰国、私も1年に数回チェンマイを訪問するということを繰り返していました」 年に数回、チェンマイを訪れるうちに「移住したい」という想いを募らせていったというmariさん。今では当たり前となりつつあるパソコン1台で仕事をするというスタイルを当時から確立していた彼女だが、移住は現実的ではないと考えていたそう。 「仕事自体のベースが日本だったので、移住なんて無理だと勝手に思い込んでいて。そんな時、フリーアドレスで仕事をしている女性ヨガ講師のインスタグラムを発見。沖縄に滞在している時の投稿だったと思うのですが、とても自由で素敵に見えたんですね。うらやましいと思うと同時に、『でも、今の自分ならできるかも!』と、そこで気づいたんです。そこから仕事を整理して、2021年、50歳の時にチェンマイでの移住生活をスタートさせました。ちなみに私はチェンマイが好きなのですが、タイ人の夫は日本のほうが好きなようです(笑)。働けるうちは日本にいたいそうで今は遠距離婚ですが、私の7歳上ともう年なので、近い将来はチェンマイに戻ってくる予定です。チェンマイは夫の地元ですし、今も夫の家族と近いところに住んでいるので、それほど心配もなく、反対もありませんでした。結婚してもう20年以上経つので、お互いのライフスタイルを尊重して、自由にさせてもらっています」 パソコン1台を携えて念願の移住をかなえたmariさんだが、肝心の仕事は何をしているのだろうか。少し遡って仕事にまつわる話を聞いてみた。出産してしばらくは専業主婦として子育てに専念。その後、金融系企業やサービス系企業などを経て、36歳で入社した遺伝子検査のサービス化に取り組むバイオベンチャーでの経験が今につながっているようだ。 「遺伝子のことなどまるでわからない文系の人間だったのですが、入社してから学び、いくつか遺伝子やそれに関連するサービスを作りました。企画・マーケティングや商品のデザイン、WEBサイトの立ち上げなども担当。WEBに関することは独学で身に付けました。そして、この経験から自分はゼロから何かを作り出すことが好きで得意なことに気づいたんです。その後、この会社を離れることになりましたが、自分で事業を立ち上げるだけの経験とノウハウは持っていたので、一番多い時で3つの法人の立ち上げに関わっていました」 独立を果たして仕事も順調だったが、あまりの激務に身体を壊してしまったmariさんは、少しずつ仕事を整理していくことに。そのことも移住を後押しするきっかけとなった。 「事業を立ち上げるのは好きだけれど、あまりお金に執着がなく、また周りの評価を全く気にしないタイプで(笑)。時間と人間関係から自由になりたいなと仕事を整理し始めました。最終的には、自宅でパソコンだけでできる仕事が残りました。一つは以前、がん関連のNPOを立ち上げていた関係でがんの情報発信と治療に必要なグッズを販売する自身のオンラインサイト。もう一つはWEB関係やコンサル系の業務委託です。取引先に訪問することもあったのですが、移住決意後はタイからでも働けるように先方にご理解いただきました。ちょうどコロナでリモートワークが当たり前になってきていたのも幸運でした。私の場合は、移住決意前からフリーで働いていたので、フルリモートワークに移行しやすかったのだと思います」 海外で収入を得る手段から住まい、語学力、ビザまで、移住に必要なこととは? 数年前からフリーランスとして働いていたmariさんは、フルリモートワークへの移行もスムーズだったが、移住後に思わぬ誤算もあったという。 「当初は自身のオンラインサイトの売上がそこそこあったので、その収入で生活しようと思っていたのですが、移住して間もなく売上が激減。そこでチェンマイからクラウドワークスでフルリモートの仕事を探し、今は日本にある教育系企業のカスタマーサポート業務をしています。月曜から金曜、9時から17時まで、日本のカレンダーでの仕事で、私以外にも海外から働いている人がいる会社です。正直、オンラインサイトは売上に変動があったので毎日落ち着かなかったのですが、この仕事を始めたことで定期的に収入があるので穏やかに暮らすことができています(笑)」 現在はカスタマーサポート業務をメインとしながら、そのほかの業務委託、わずかではあるがオンラインサイトの売り上げを含め、月の収入はだいたい22~28万円だというmariさん。では、それに対してチェンマイでの1か月の生活費はどのくらいなのかも教えてもらった。 1 THB(タイバーツ)=4.5円(2024年11月時点) ◆家賃(家具・家電付き) 11,500THB ◆水道光熱費 1,000 THB ◆通信費(家のWi-Fiと携帯電話) 1,000 THB ◆生命保険(日本の住民票を抜いたため、タイで民間の保険に加入) 2,200 THB ◆食費(ほぼ自炊)+雑費 6,000 THB ◆毎週のマッサージ 2,000 THB ◆ネイルサロン(3週に1回) 500 THB ◆外食費 3,000 THB 月額合計:27,200THB(約12,2000円) 「今は息子2人も成人して独立したので、私一人にかかる金額で、これに加えてタイの銀行の投資信託に毎月積み立てを10,000THB、また日本の年金を払っています。以前は3人で10万円ちょっとだったのですが、円が安くなってしまったので今は12万円超えるくらいですね。とはいえ、毎月2~8万円ぐらい残るのでこれは旅行用に貯めて、タイ国内外を2、3か月に1回の割合で旅しています」 mariさんが現在、暮らしている家賃が11,500THB(約52,000円)という住まいだが、なんと140平米で4ベッドルーム、3バスルームというから驚きだ。チェンマイの街の中心からバイクで10分ほどの住宅街にある3階建てのタウンハウスだそう。閑静で住環境もいいエリアだが、「タイ語が話せない場合は、旧市街やニマンヘミンなどが最初は住みやすいと思います」とのこと。 「観光客が多いエリアならエアビーという選択肢も。1か月単位で借りられる物件もありますし、長期契約になれば家賃が安くなります。一人暮らしなら10,000THBほど出せば、ジム・プール付きの新しいコンドミニアムも見つかるはず。外国人でもパスポートと長期滞在ビザだけで借りられる物件が多く、日本人は特に信用があるので、家主さんも喜ばれるのでは。またチェンマイには公共の交通機関がないので、バイクや車を所有するか、買い物がしやすいエリアに住むことをおすすめします」 タイ語の話題が出たところで、現地でどれくらいの語学力が必要なのか、mariさんのケースを参考として聞いてみた。 「私のように自宅で日本の仕事をするなら、タイ語や英語が必要になるのは買い物の時ぐらいです。ただ、これも指さしや簡単な英語で通じますし、翻訳アプリもあるので、それほど語学について心配する必要はないのかなと。言葉は長期に滞在していくうちに自然に身についていくものですしね。タイ語の簡単な会話の本を読む程度で最初は充分だと思いますが、タイ語は発音が難しいので、現地で話しながら学ぶのが一番です。タイ人である夫との会話は日本語だったので、タイ語は本当に日常会話程度で、タイ文字も読めません(笑)。英語も日常会話程度ですが、チェンマイには欧米の長期滞在者が多く、チェンマイで友人を作りたいので今は英語を独学しています」 もちろん現地の企業に勤めるなら高いタイ語力が必要になってくるが、そもそもタイ国内で就労するのは駐在員もしくは、労働許可証の取得ができる長期居住者ビザを取得した者がほとんど。一般的に取得できるビザの多くは、タイでの就労は認められておらず、国外からの収入に限られている。しかしながら、ビザの種類も多岐にわたっており、日本人にとって長期滞在や移住しやすいのが魅力だ。 「私は配偶者ビザなので今は1年ごとに更新する限り、タイに滞在することができます。ポピュラーなのはリタイアメントビザですね。50歳以上で年金相当の収入証明が見込めれば、タイに住むことができます。また年金受給者ではない50歳以上が対象のロングステイビザもあります。さらにお金に余裕があるのならば、取得費用が数百万円ほどしますが最長20年間滞在できるというタイランド・プリビレッジ(タイランドエリートビザ)も人気。ただし、いずれもタイ国内で就労することはできません。最近人気なのは子供の教育ビザで親もついてくる、というパターンでしょうか。チェンマイは安くて質の高いインターナショナルの学校がたくさんあるので、親子留学される方が多いですね。私のブログにも親子留学を検討されている方からよくコメントをいただきます」 さらに2024年には、デジタルノマドやリモートワーカーを対象としたデスティネーション・タイランド・ビザが新設。50万バーツ相当以上の残高証明が必要など条件はあるが、20歳以上であれば取得でき、180日間滞在できるのでお試し移住をするにも最適だ。 「タイではビザの種類や収入証明の金額などがよく変更になるので、最新の情報はタイ領事館の公式サイトをご確認ください。いずれにしても私のおすすめは移住前にフルリモートできる仕事を日本で見つけておくことですね。今は一般的な仕事の経験があり、パソコンが使えれば、そういった仕事がたくさんあります。安定した日本からの収入があれば、まとまった金額がなくても、タイに一定期間滞在することができるでしょう」 ノマドワーカーや移住者、なにより女性にとってチェンマイは過ごしやすいエリア さて、ここまでで移住にまつわることをいろいろ聞いてきたわけだが、やはり一番の関心ごとと言えばmariさんのチェンマイでの暮らしぶりだ。まずは、毎日の生活スタイルを教えてもらった。 「平日の朝は7時半に起床し、9時から17時まで仕事です。フルリモートですが週に数回オンラインMTGがあり、たまにカフェやコワーキングスペースで働くことも。夜はストレッチ、友達とチャット、英語の勉強、ブログを書くなど、自由気ままに過ごしています。休日はほとんどお出かけ。チェンマイには新しい店がどんどんできるので、カフェ巡りやオーガニックマーケット、洋裁店に生地を持ち込んでワンピースをオーダーするなど、充実した一日を過ごしています。基本、平日は自宅で食事しているので、休日は3食とも外食ということも。加えて、日曜日には必ず2時間のタイマッサージを受けて、リフレッシュしています」 このようにチェンマイライフを満喫しているmariさんにとって、移住してよかったことでまず思いつくのは〝気候のよさ〟だという。 「これほど気候がメンタルに影響するとは思いませんでした。寝室の窓が壁一面なのですが、毎朝部屋の中が優しい光で満たされて、本当に幸せな気持ちに。日本は暑すぎて寒すぎますよね(笑)。チェンマイでは4~5月がすごく暑くなるのですが、この時期はベストシーズンのベトナムやタイのサムイ島に長期滞在しているので、1年を通してよい天気の中で過ごすことができています。あと円が安くなりましたが、それでもまだまだタイの物価は安い。日本にいる時よりも広い家に住んでいるので生活に余裕を感じますし、カフェやレストランにも頻繁に行くようになりました。また、2、3か月に一度くらいの頻度でタイ国内外を旅行できるのも旅好きの私にはとてもうれしい限りです」 気候がよく過ごしやすいのはうれしいが、一年通して蚊に刺されることと、雨季には蟻が部屋の中に入ってくるのが困ると語るmariさん。 「でも、蚊や蟻のもだいぶ慣れたというか諦めたので、それほど気にならなくなりました。最初は日本ほど衛生的でないことも気になっていましたが、最近はチェンマイも綺麗になってきた気がします。もしかしたらこれも慣れたからかも(笑)」 ほかにもっと好きな国が見つからない限り、これから先もずっとチェンマイで生活していきたいと語るmariさんに、現在進行形でチャレンジしていることと、この先チャレンジしたいことを聞いてみた。 「英語をもっと話せるようになること、ワークアウトで健康的なスタイルを保つこと、もっとたくさん旅行に行くことですね。さらに5年以内に自分好みの家を建てることのほか、近い将来チェンマイでビジネスを始める予定です。すでに日本料理店を開業する準備を進めています。やはり私は自分で事業を立ち上げるのが好きなんですよね。幸せの定義はいろいろあると思うのですが、私は自分で自分の成長を感じられることが幸せだと思っていて。ですので、常に小さな目標を持ち日々行動しているのですが、それを達成するために必要なお金があれば充分で、そして必要なお金は計算可能なので、その範囲で仕事をしています。あとは健康であることが何より大切ですね」 移住先での生活を謳歌しながらも、さらに次のステップへと進み続けるmariさん。最後にチェンマイ移住をおすすめするポイントを教えてもらうと共に、移住を考える人へのアドバイスをもらった。 「タイは、物価の安さと生活の便利さのバランスがとてもよくとれていると思います。ノマドワークやリモートワークの観点からみても、日本との時差が2時間で働きやすいのがポイント。おしゃれなコワーキングスペースもあり、世界中の国から人が集まる国際的な街でもあります。チェンマイを拠点にアジアをノマドワークしながら周っている人もたくさんいますし、比較的治安もよいので女性にもおすすめです。これまでタイへの移住と言えば、リタイアメント後の男性が中心だったのですが、働き方や生き方が変わった今、シニアの女性にもチェンマイ移住をおすすめしたくて、『mariblog』を始めました。私世代の女性たちの中には〝女はこうして生きていかなくてはならない〟という、世間に勝手に決められた役割に苦しんできた方も多いのではないでしょうか。私は今、日本から離れて清々しい気持ちでここチェンマイに暮らしています。この年代になって自分を変えるのはとても難しいことですが、住む環境を変えることは行動さえすればかなうはず。そして住む環境は私たちの気持ちや考え方に大きな影響を与えます。チェンマイに移住するなら、まずはチェンマイを好きになってから。ぜひ一度訪れて、チェンマイを大好きになってください」 文● 杉山幸恵