「この人と結婚できて本当によかった」不妊治療で傷ついた日も、忘れていた結婚記念日も、夫婦をつないだホワイトボード日記【住吉美紀】
フリーアナウンサーの住吉美紀さんが50代の入り口に立って始めた、「暮らしと人生の棚おろし」を綴ります。 【実際の画像】夫婦の手書きにほっこり。ホワイトボードのメッセージ 夫とは、どんな占いでも「友達夫婦」と出てくる。実際に結婚する前から、二人の間には、友達というか、“刑事ものドラマに出てくる相棒コンビ”のような空気感があった。最初から格好つけずにフランクに話せたし、会話の内容も、ロマン語りや概念の議論よりも、食べ物や猫、家具や家族の話など、実際的な話が断然多かった。 そして、ある程度人生経験を積んだ40代で知り合ったため、互いの仕事や趣味の領域に干渉し過ぎず、それぞれの過去にも固執し過ぎず、適度な距離感とリスペクトを持って関係づくりを始めることができた。 夫は大学を出てすぐ、地元岩手の中学校で数学の教員をしていたが、アルバイトで知った飲食店とワインの世界が忘れられず、1年で転職。それ以来、東京の老舗フレンチやホテルのレストランで、サービスやソムリエとして働いてきた。 夫は飲食業界、私はメディア・放送業界。お互いまったく別世界で、しかも、どっぷりと専門職として働いてきたため、互いの仕事の常識や舞台裏が新鮮だった。だからこそ、それぞれが培ってきたキャリアや、築いてきた社会との関係を尊重し、一方が何かを諦めるとか、一方だけが我慢して犠牲になることがないように、サポートし合えるところはしながら、折衷案の暮らしを二人で作ろうという意志があった。 結婚当初から、すでに私はラジオで生放送の帯番組を担当していたため、年末年始もお盆も関係なく、毎朝必ず早かった。逆に夫は結婚してまもなく、深夜2時近くまで営業するレストランを仲間と立ち上げたため、完全な夜型。帰りは必ず深夜だった。私が朝起きて出かけるときには夫はぐっすり眠っているし、夫が帰宅する頃には私は既に眠っていた。 ほとんど寝ている姿しか見ない家庭内時差で、会話をする隙がない。スマホのメッセージで連絡はできても、なんだか味気ない。友達や職場の仲間などは、時々の濃い対話や共同作業などで信頼関係を築くことができるが、夫婦というのは、日常の、比較的ライトな、もしかしたら長い目で見たらどうでも良い作業や会話の積み重ねで、“塵も積もれば”的に信頼関係を構築していく気がしている。その塵が、明らかに足りていなかった。 そこで始めたのが、「ホワイトボード日記」だ。 と言っても、最初から、そこまでの目的意識を持って始めたわけではない。当時、深夜に帰る夫のために、私が夜食(本人にとってはそれが夕食)を必ず用意しておいた。その献立や食べ方の説明、プラスアルファを書くために、冷蔵庫に小さなホワイトボードを貼って書き始めたのだ。しかし、月日を重ねるうちに、私たちにとって、とても意味があると実感することとなった。