なぜU-24日本代表は“V候補”メキシコを破る金星を挙げることができたのか…城氏が東京五輪の戦いを分析
また縦の対人に強いサイドバックの中山もしっかりと圧力をかけ続けて警戒すべきライネスを抑え込んだ。中山を起用し守備的に入ったことも正解だった。ベンチの采配の冴えだ。 2点をリードして後半を迎えた。ここで日本には2つの選択があったと思う。このまま前半と同じサッカーで3点目を奪いにいくのか、それとも守備的に2点を守りにいくのか。森保監督は前者を選択した。引くどころか3点目を取りにいった。チームとして「やれる」という手応えがあったことに加え、森保監督は、最後まで全員がハードワークを続けることができると信頼したのだろう。後半20分に運動量のある前田を投入したが、その交代でチームにメッセージを伝えたと思う。 もう一人、林の奮闘も付け加えておきたい。気温28度、湿度74%の環境の中で前線からの懸命なディフェンスに大量の汗を流し、攻撃ではポストプレーで何度も起点を作りながら、縦に抜けようとする動きを続けた。おそらくメキシコは林の存在が嫌だったのではないだろうか。彼の相当な運動量が、この日の日本の大金星を象徴していた。 日本は優勝候補のメキシコをハードワークと組織で打ち破った。私はメキシコ戦がグループリーグ最大のポイントだと考えていたが、決勝トーナメント進出に向けて非常に大きい勝ち点「3」を追加して勝ち点「6」でトップに立った。五輪の戦いは“勢い”というものが重要になってくる。メキシコの個の力に対して組織で上回ったことはチームに自信と勢いをもたらしたと断言できる。 だが「メダルが見えた」とまでは言えない。フランスは、この日の南アフリカ戦に4-3で競り勝ったが、2試合を見る限り、得点力はあるがミスが多くサッカーが“雑”だ。 しかし、油断はできない。組織的にまとまってくると、どんな展開になるかわからない。日本は勝ち点「1」でも決勝T進出が決まるが、同じ先発メンバーで臨み、勝ち点「3」を奪いに行くゲームプランを採用すべきだろう。メキシコ戦の疲労のリバウンドが心配だろうが、万が一のケースの得失点差を考えて1点でも多く取っておかねばならない。
そういう意味で大金星の中で完封できなかったことが課題として残る。後半40分の失点はキーパー谷のミス。フリーキックを直接放り込まれたが谷は原則を忘れていた。このケースでは、まず誰も触れず直接狙われることを想定してポジショニングを考えておかねばならないが、ニアのゴールポストに寄り過ぎていた。しかも足で止めにいっていた。防げる得点だった。怪我が回復しチームに合流したばかりの三笘をフランス戦を見据えて後半34分から使う余裕もあったが、次のフランス戦も前半はフルスロットルでいき、状況を見ながら決勝Tに備えればいい。 (文責・城彰二/元日本代表FW)