先生が心を揺さぶられた、 不登校の子どもたちによる「お互いへの思いやり」 新形態の公教育「メタバース学校」は、優しさであふれていた
グロウスには、授業を担当する指導主事の他に福祉や心理の専門家3人が常勤している。先生たちにとっては、サポート方法を相談できる相手がすぐ近くにいてとても心強いという。 以前は中学校の教諭だった指導主事の大高さんは、過去の自分を振り返った。 「子どもたちがそれぞれに課題や心のモヤモヤを持っているのに、自分はちゃんと見ていなかったという反省があります」 学校現場にいたときは、教室で目の前にいる生徒への対応に必死で、不登校の子どもの背景事情までは思いが至らない面があった。でも、今は一人一人の興味や課題に目を向けることの大切さを考えるようになった。「普段、私たちに見えていないところに子どもたちの可能性が秘められている」。この感覚は、気付こうとする教師側の意識がないと得られないものだという。だからこそ、多くの教師にグロウスの取り組みを知ってほしいと願う。 ▽通いやすい学校づくりの重要性
文部科学省は不登校のプラスの面について「休養や自分を見つめ直す積極的な意味を持つことがある」と言及しつつも、支援がない児童生徒が11万人を超える現状には危機感を抱いている。 今後は、グロウスのようなオンライン授業の環境整備や、学習指導要領に縛られないカリキュラムが組める「学びの多様化学校(不登校特例校)」の設置促進、空き教室を活用して学校内で不登校の児童生徒をサポートする「校内教育支援センター」の拡充などに予算を重点配分する。 ただ、問題はそもそも不登校急増の原因は明確ではない点だ。2022年度に文部科学省が実施した「問題行動・不登校調査」では、学校が判断した不登校理由は、本人に起因する「無気力、不安」が51・8%と過半数を占めた。 この結果に対し、文部科学省幹部は「実際は現場が原因を把握できないケースも多い」とみており、より詳細な分析が必要だとする。 近畿地方の公立小のベテラン教諭は、子ども側の要因だけでなく「学校が通いやすい場所になっているか考える必要がある」と語る。「過度な決まり事や指導で、子どもが安心できない学校になっていないか」との問題意識があるからだ。
教員の多忙化と不登校増加の関係も指摘する。子どもたちの困難の背景にある事情を聞き出し、対処する時間が持てなくなっているという。その上で、こう訴える。「現場の業務や授業を増やす方向で進めた文部科学省の施策が学校を窮屈にした面がある。子どもにも教員にも余裕が必要だ」