先生が心を揺さぶられた、 不登校の子どもたちによる「お互いへの思いやり」 新形態の公教育「メタバース学校」は、優しさであふれていた
2022年度のさいたま市の不登校児童生徒は2103人で、うち757人が支援につながっていなかった。学びからも人間関係からも疎外されれば、未来の可能性が失われかねない。だからこそ「何にもつながっていない子どもをゼロにしたい」。 ▽仲間の「いいね」が頑張るエネルギーに 2時間目の算数の授業。「正方形の面積を求める公式は?」と先生が質問すると、子どもたちが「誰か教えて」「たて×よこ?」とチャットで反応する。先生は、書き込みまれた子どもたちの反応を手がかりに合いの手を入れたり、チャットにヒントを書いたりして授業を進めていった。 この授業スタイルは、最初からうまくいったわけではない。グロウス開設時から中学生の数学を担当する指導主事の大高恭介さんは、悩んだ過去の経験を明かす。 「去年の1学期はチャットの反応もほぼなかったし、やっていることに価値があるのか分からなかった」 だが、夏休みに入ると保護者から思いがけず多くの感想が寄せられた。
「毎日の目標ができて子どもの表情が明るくなった」 「家庭の雰囲気が変わった」 先生たちは、その感想から子どもたちの変化を感じ、力を得てきた。現在はチャットへの書き込みが活発になっている。 大高さんは語る。「普通の教室では発言できない子もチャットなら書き込むことができる。自分の言葉で表現するのは成長にとって大切なこと」 チャットでは、子どもたちが他の児童生徒を傷つけるような発言はほぼないという。むしろ、他者の発言を肯定し、「いいね」ボタンを押すのがほとんどだ。そのやりとりが「子どもが頑張るエネルギーになっている」(大高さん)と見ている。 趣味や作品を共有できるチャンネルを開設してみると、子どもたちは自分で描いた絵や、楽器を演奏する動画など思い思いの表現を投稿した。投稿には、すぐに「上手だね」というコメントや「いいね」が付いた。篠谷さんは、やりとりを見ていて心が揺さぶられたという。